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佐藤 慧氏, オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 開発統括室 モータ制御開発部 商品開発3課
1)LabVIEWを用いたソフトウェア検証ツールの開発 2)電気信号とRAM値の同期取得
本システムはPC、PXIモジュール、横河デジタルコンピュータ社製RAMScopeGT150、電源、及びターゲットとなるEPS_ECUから構成される。本システムではEPS_ECUに搭載されたマイコンの入出力端子のうち、検証で必要となる全ての端子に対して配線を行うため、多チャンネルの入出力が可能なPXI-6723、PXIe-4300、PXIe-6363といったモジュールを採用している。これらのモジュールを電流増幅、トランジスタを用いた端子地絡といった機能を有するI/F BOX(自作ハードウェア)を介してEPS_ECUに接続している。
現在、EPS_ECU(電動パワーステアリングコントローラ)のソフトウェア開発においてソフトウェアの複雑化に伴い、その妥当性を確認する検証試験に多くの工数がかかっている。これまでは、電気信号の取得、注入及び内部変数(RAM)のモニタリングといった検証試験に必要な機能を複数の機器を用い、それらを同時に操作することで検証試験を行ってきた。この試験方法では、機器ごとのインターフェイスで試験の設定を行う必要があり、また、各ツールの設定をテストケースとして一括して資産化することができなかった。そのため、オペレーションの煩雑化や、再試験時にシステムを再構築すことが容易でない等の問題があった。これらの問題に対処するため、操作をPC上に集約し、設定をテストケースとして保存可能なシステムの開発を行った。
EPS_ECUに搭載されているマイコンには100個の入出力端子が存在しており、入力端子への電圧の注入や、出力端子からの出力電圧をモニタすることで試験を行っている。これらの端子のうち、どの端子の信号をモニタするかは試験によって異なっているため、従来のシステムでは試験毎にマイコンの対応する端子にICクリップを装着し、再配線を行っていた。
ソフトウェアェアの複雑化により、外部出力と外部入力の関係が単純ではなくなってきている。そのため、電気信号に加えて、ソフトウェアェアの内部情報としてRAM値をモニタする必要性が出てきた。その際、マイコンに入力される電気信号とRAM値の相関を確認するためには、これらを同期して取得する必要がある。従来のシステムでは日置電機社製CANアダプタ8910でCANバス上の信号をD/A変換し、電気信号と同時にオシロスコープに記録していた。しかしながら、CCP(CAN Calibration Protocol)通信経由でRAM値をリードしている制約上、電気信号とD/A出力の間には数msの遅れが発生する。また、モニタできるRAM値の数は数個に限られていた。
開発したソフトウェア検証ツールの構成図をFig. 1に示す。
本システムはPC、PXIモジュール、横河デジタルコンピュータ社製RAMScopeGT150、電源、及びターゲットとなるEPS_ECUから構成される。本システムではEPS_ECUに搭載されたマイコンの入出力端子のうち、検証で必要となる全ての端子に対して配線を行うため、多チャンネルの入出力が可能なPXI-6723、PXIe-4300、PXIe-6363といったモジュールを採用している。これらのモジュールを電流増幅、トランジスタを用いた端子地絡といった機能を有するI/F BOX(自作ハードウェア)を介してEPS_ECUに接続している。
また、RAMScopeGT150を用いてRAM値のモニタ、書き換え等を行う。
本システムでは電気信号の取得、注入及びRAM値のモニタリング、書き換え、といった操作のすべてをPC上のインターフェイスから行う。そのため、信号入出力、RAMScope操作のためのドライバが提供されているLabVIEWを使用しインターフェイス開発を行った。インターフェイス上でユーザーは、取得信号(電気信号、RAM値、CANメッセージ)の選択(最大20チャンネル)、注入信号パターンの読み込み、注入点、タイミングの設定、及びそれらの設定の保存、読み込み等の操作を行う。インターフェイス画面をFig. 2に示す。
新システムではEPS_ECUに搭載されたマイコンの入出力端子のうち、検証で必要となる全ての端子に事前に配線を行うため、試験毎に再配線を行う必要はなくなった。
また、電気信号とRAMの同期取得については、I/F BOXからRAMScopeGT150のTRIG_INに同期信号を注入し、モニタ開始タイミングをそろえることで電気信号とRAM値の同期取得を実現している。それによりD/A出力分の遅れがなく、多数のRAM値をモニタ可能となっている。
従来システム、新システムそれぞれで、複数件の検証試験を行い、その工数の比較を行った。その結果をTable. 1に示す。
従来システム | 新システム | |||
作業 | 所要時間 | 作業 | 所要時間 | |
再利用可能な作業 | 機器接続 | 4h | 配線 | 7h |
EPS_ECU別設定※ | 1h | |||
試験毎に必要な作業
| 配線 | 1h | テストケース作成 (再試験時再利用可) | 25min |
機器設定 | 12min | 試験実行 | 6min | |
試験実行 | 6min | ― | -― |
Table. 1 工数比較結果 ※配線情報等の設定
上記結果より、試験毎に必要な作業時間は、過去に作成したテストケースを使用できない新規試験の場合、従来システムでは試験1件あたり78min、新システムでは31minとなり、約60%の工数を削減できた。また、過去に作成したテストケースをそのまま使用できる場合約90%の工数を削減できる。
新システムでは初期の配線に従来よりも多くの時間がかかるが、従来システムではテスト毎に配線を行う必要があるため、複数の試験を行う場合、従来システムよりもトータルの工数は少なくなる。
今後は、さらなる工数削減を目指し、EPS_ECUへの配線、テストケース作成といった作業の簡略化に取り組む予定である。
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佐藤 慧氏
オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 開発統括室 モータ制御開発部 商品開発3課