NI LabVIEWとNI CompactRIOを使用した放射能汚染地域の線量監視システム

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"KURAMA-IIの開発で、LabVIEWを使用していなければ、おそらく、開発期間は1~2カ月ほど伸びていただろう。"

- Dr. Minoru Tanigaki, Division of Quantum Beam Material Science Research Reactor Institute, Kyoto University

The Challenge:
前バージョンであるKURAMA(放射能汚染地域の線量監視システム)の車載機を小型化/一体化することで、設置の手間を省けるようにすること。加えて、自動測定機能を実現することにより、測定者を不要とすること。さらに、福島第一原発事故からの復興に活用できるよう、短期で開発を完了させる必要がある。

The Solution:
LabVIEWとCompactRIOを使用することで、システムの小型化、自動化を実現。また、前バージョン(KURAMA)で開発したプログラムを、ハードウェア構成を変更したKURAMA-IIにおいても、そのまま再利用することができたので、短期間で開発を完了することができた。

Author(s):
Dr. Minoru Tanigaki - Division of Quantum Beam Material Science Research Reactor Institute, Kyoto University

【背景】
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う大津波は、東日本に甚大な被害をもたらした。なかでも、福島第一原子力発電所で発生した一連の事故により、福島県を中心とした地域では、放射線量(空間線量率)を数十年にわたって細密に測定する必要が生じた。住民の被曝状況や環境汚染の実態を把握するためには、精密な空間線量マップを迅速に作成できる仕組みを早急に確立する必要がある。そこで、現地を隈なく自動車で走行しながら、横断的かつ細かな粒度で線量測定を行い、結果をほぼリアルタイムで可視化することのできるシステムを開発することにした。それが、「KURAMA(Kyoto University RAdiation MApping system)」である。開発を開始してから、部材調達を除くとわずか1週間後でKURAMAは完成した。

KURAMAの構成は、次のようになる(図1)。まず、車載機を搭載した車両を走らせながら、任意の場所で放射線検出器によって線量を測定する。同時に、測定を行った場所と時間の情報をGPSユニットで取得する。そして、線量の測定結果に、測定位置と時間の情報をタグ付けする処理を行う。その結果得られたデータをインターネット経由でサーバに送信し、地図データ上に測定結果をプロットして線量の分布をほぼリアルタイムに可視化するというものだ。なお、測定用の車両としては一般的な乗用車を使用し、測定者が車載機の操作を行うという手法を採用した。

              図1. KURAMAのシステム構成

車載機は、放射線検出器(サーベイメータ)、インタフェースボックス、GPSユニット、パソコン、3Gモバイルルータの各コンポーネントを組み合わせて構成した(図2)。サーベイメータは、市販のポータブル機を改造し、GPSユニット、パソコン、3Gモバイルルータも一般的な市販品を使用した。

図2. KURAMAの車載機の構成

インタフェースボックスの主機能は、AD変換である。サーベイメータによる測定結果はアナログ電圧として出力される。そのままではパソコンで扱えないので、AD変換を行ってデジタルデータを得る。この処理を担うAD変換器としては、NI USB-6009 を使用した。また、線量情報と位置/時間情報の関連付けやネットワーク通信を行うソフトウェアは、NIのグラフィカルシステム開発プラットフォーム「LabVIEW」を使用して開発した。そして、それらのソフトウェアによる処理はパソコンで実行する。

【課題】
KURAMAは、機能的には当初の構想を実現するものであり、福島で行った確認実験でも、実用に堪えるものとしての評価が得られた。しかしながら、そうした実験などを通して、いくつか改善すべき課題が浮かび上がってきた。

1.  車載機の小型化/一体化
KURAMAの車載機は、パソコンやインタフェースボックス、サーベイメータなどの独立したコンポーネントを配線でつないで構成されていたため、設置に手間がかかるし、広いスペースが必要になる。放射線量の測定を目的とした車両を用意するのではなく、路線バスやコンビニエンスストアの配送車など、毎日定期的に地域を隈なく走行する車両を使って計測できるようにするために、車載機の小型化/一体化を実現すること

2.  測定の自動化
測定とデータ送信の操作を完全に自動化し、装置の操作を行う測定者を必要としないシステムとすること

3.  短期間で開発
福島県を中心とした地域で今まさに起きている重大な事態に早急に対応できるよう、最短期間で実用レベルのものを実現すること

【ソリューション】
KURAMA-IIのシステム構成図は、図3のとおりだ。大きく変わったのは車載機(図の左下)の部分であり、コンポーネントの数はわずか2つとなった。それらのうち1つは、放射線検出器である。もう1つは、再構成が可能な制御/監視システム「NI CompactRIO」である。KURAMAにおけるインタフェースボックスとパソコンをCompactRIOで置き換えた。CompactRIOは、小型で自動車の衝突試験におけるデータ収集用に自動車に取り付けられるなど耐久性にも優れているため採用した。また、KURAMAでは独立して存在していたGPSユニットと3Gワイヤレスルータも、CompactRIOのモジュールとして組み込むことができた。このような構成とした結果、外形寸法がわずか34.5 cm×17.5 cm×19.5 cmのツールボックスとしてまとめることができ、小型化を実現した(写真1)。また、LabVIEWで開発したプログラムをCompactRIOに実装したことで、KURAMA-IIは電源さえ入れれば、特別に操作する必要はなく、測定の完全自動化を実現できた。

さらに、KURAMA-IIは2カ月というわずかな開発期間で完成させることができた。KURAMA向けにLabVIEWで開発した実際の測定実績が豊富なプログラムを、ハードウェア構成を変更したKURAMA-IIでも再利用できたため、開発時間の大幅短縮が実現した。

原子路実験所では、数年前から加速器の制御などにLabVIEWを使用していたが、今回の開発においては、テキストベースではなく、グラフィカルに表現するLabVIEWのプログラミング手法や、複数のメンバーでの分担作業を容易に実現できるなど、LabVIEWを使用したグラフィカルシステム開発のメリットを十分に享受でき、現場での課題を解決した実用レベルの新しいシステムを開発することができた。グラフィカルシステム開発という手法を採用していなかったら、おそらく、開発期間は1~2カ月ほど伸びていただろうと考える。

              図3. KURAMA-IIのシステム構成



     写真1. KURAMA-IIの車載機

【今後の展開】
KURAMA-IIのプロジェクトは、日本NIの「ものづくり復興支援助成プログラム」に採択され、日本NIから必要な製品や技術について協力を得るかたちで進めた。

現在は、KURAMA-IIをより完成度の高いものにするためのプロトタイプ開発を継続的に行っている。例えば、検出器の部分の感度を改善するといったことなどである。また、実際に現場での使用を重ねていくうちに、使い勝手の面で改善の要望が出される可能性がある。

KURAMA-IIは走行サーベイシステムだが、この枠を越えたシステムも検討中である。例えば、自動車では行けない山林のような場所での測定や、公園内の詳細な測定などに対応できるように、可搬式のサーベイシステムを開発することを考えている。そのような用途に対応できるようにするには、まず電源をどのようにして確保するのかという課題を解決しなければならない。また、GPSよりも高い精度が得られる測位の方法についても検討する必要があるだろう。

Author Information:
Dr. Minoru Tanigaki
Division of Quantum Beam Material Science Research Reactor Institute, Kyoto University

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