NI WLS-9215を用いた構造物ヘルスモニタリングシステムの構築

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"データ収録にはNI WLS-9215を使用することで無線データ通信・多点同時計測の課題を解決し、開発プラットフォームにLabVIEWを用いることで、加速度から変位の算出・リアルタイムで変位を可視化できるようになりました。"

- 高本 龍直氏, 愛媛大学 大学院  理工学研究科  生産環境工学専攻

The Challenge:
・多点同時集録ができる計測システム ・あらゆる場所での利用が想定されるための無線データ通信システム ・加速度センサで計測された加速度をリアルタイムで変位を算出 ・集録データをリアルタイムで可視化する表示機能

The Solution:
本研究では、複数のセンサノードを用いて、構造物全体の動特性を表示するシステムの開発を試みた。

Author(s):
高本 龍直氏 - 愛媛大学 大学院  理工学研究科  生産環境工学専攻

【背景】
社会インフラストラクチャを持続的に使用するための新しい維持管理技術の研究開発が急ピッチで進められている。特に、データ転送・信号処理等の通信技術の進展や計測器の品質向上によって、遠隔モニタリング技術を土木構造物へ適用する試みが近年盛んに行われている。構造物の多点計測による動特性の詳細な把握を、安価に実現する可能性を持っているのが、MEMS(Micro Electro Mechanical System) センサと、無線通信・演算処理機能を組み合わせたスマートセンサである。

【課題】
本研究では、多点で計測された振動データを基に構造物全体の動特性を表示するシステムを開発する。既往の研究と本研究の大きな違いは、収録データの 3 次元可視化である。これまでの研究では、モニタリングした振動データを時系列で表示したり、スペクトルを出力するだけのものが多く、多点で計測されたデータを一元処理して構造物全体の状態を表示するシステムの構築までは至っていない。そこで、本研究では、構造物の振動状態を 3 次元的に、かつ高速に表示するシステムの開発を目的とする。

【ソリューション】
無線センサノードと基地局の構成
図–1に無線センサノードと基地局の構成を示す。ここではMEMS加速度センサ(カイオニクス社製、KXM52-1050、3軸の加速度センサを内蔵)を使用した。センサが加速度の変化を検知すると、内部回路の静電容量が変化し、この物理量の変化を電圧信号に置き換える。この電圧信号はBNC ケーブルにより無線部へ転送される。無線部では、センサ部から転送された電圧信号の A/D変換を行い、デジタル信号を無線 LAN によりルータを経てノート PC に送信する。ここでは、N WLSI-9215 を用いて A/D 変換・データ送信を行う。無線規格は IEEE802.11g を用いており、無線ネットワーク形態はインフラストラクチャ形態を採用している。ノード間の同期処理については、GPSの1PPS信号をNI WLS-9215のPFI端子に入力することで時刻同期を行っている。

図-1 無線センサノードと基地局

加速度波形から変位の算出
MEMS 加速度センサで得られる振動の信号は加速度である。本研究では振動を 3 次元的に可視化したいので、加速度から変位を算出する。ここでは、MEMS センサで得られた加速度を変位に変換するために積分を2回行う。繊維算出の手法は、線形加速度法を用いている。しかし、加速度を数値的に積分して変位を得る場合には、一般的に基線ずれ (低周波のドリフト)が伴う。これは、加速度成分の基線ずれ等に起因するものであるが、低い周波数を除去するフィルタを作用させることによって基線ずれを防止できる。ここでは、振動のリアルタイム可視化を可能にするため、加速度から変位を高速に求めるためのデジタルフィルタを設計した。

次に、このデジタルフィルタを用いて加速度を精度よく変位に変換できるかについて実験を行った。ここでは、振動試験機によって鉛直方向に変位0。5mmの振動(振動数10Hz の正弦波)を発生させ、振動試験機に内蔵のLVDT変位センサで計測された変位とMEMSセンサで計測された加速度を積分した変位とを比較した。図–2に結果を示す。デジタルフィルタを用いて加速度を変位に変換した波形は、変位センサの波形と全体的に良く一致しており、変位の推定に有効性が確認された。

図-2 変位の比較

コンクリートスラブの3次元可視化
無線センサノード10機を用いて振動の計測実験を行い、構造物の振動を 3 次元的に可視化する。計測対象は8階建ての鉄筋コンクリート建物AとBを結ぶ連絡通路である。この連絡通路の概要を図–3に示す。無線センサノード10機で得られた3軸の加速度から変位を算出し、3Dグラフを用いて変位をマッピングすることによって、スラブの3次元変形のアニメーションを作成した。今回製作したセンサノード10機の位置を座標上に反映させ、コンクリートスラブの3次元可視化を行った。LabVIEWのフロントパネルを図-4に示す。今回はスラブ上部の振動しか得られなかったので、可視化に際してスラブの厚さ方向の変形は一様であるとした。なお、加速度データの集録から可視化までノート PCで一元的に処理している。作成したアニメーションのうち、主要な時間ステップの変形スナップを図–5に示す。ここで、変位は微小であるため、変形が見た目に分かるようにスナップは誇張して描いている。跳躍直前でも微小な変位を検出しているが、これは跳躍前の人の身体の上下屈伸運動によるものであると考えられる。跳躍直後は変形が小さいが、跳躍 0。2sec後 (1。1sec) には0。1mm程度の変形が見られる。また1。7secの着地直後は強い変形を示しており、最大で約0。2mmの変形が見られる。また、3。0secには振動はほぼ収束している。今回、ノードを10機しか作成していないので、すべて配置したとしても低次の振動モードしか検出できないが、3次元的に振動を可視化した結果、跳躍の衝撃によってz方向の曲げ振動が卓越していることが観察できた。

図-3 計測対象の概要とセンサ配置位置

図-4 LabVIEWのフロントパネル

図-5 3次元可視化のスナップショット

【結果】
本研究では、複数のセンサノードを用いて、構造物全体の動特性を表示するシステムの開発を試みた。大規模な構造物ではセンサノードを分散して配置するために、無線通信によってデータを収集することが望ましい。また、多点のセンサを設置するためには、ノード1機あたりのコストを下げる必要がある。ここでは、安価なMEMS加速度センサを振動計測に利用した。土木構造物の低加速度領域の振動を市販の MEMS センサで計測するために、デジタルフィルタを利用してノイズの減少に努めた。また、加速度から変位を計算する際の基線ずれを防止するためにもデジタルフィルタを用いた。ここでは、10 機の無線センサノードを用いて振動測定実験を行い、得られた変位をマッピングすることで、構造物の振動を良好に3次元可視化できることを示した。

※本研究の一部は,科学研究費補助金(基盤研究C:課題番号22560482,代表 大賀 水田生)の補助を受けて行われたものです。

Author Information:
高本 龍直氏
愛媛大学 大学院  理工学研究科  生産環境工学専攻

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