摩擦振動の発生メカニズムの解明に向けたゴム/ガラス接触面の撮影・計測システム

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"LabVIEWを用いてシステムを構築することで、約70%のコストの削減と約25%の実験時間の短縮に成功しました。"

- 永井 良治氏, 横浜国立大学 大学院 環境情報学府 中野研究室

The Challenge:
予算の都合上、その場観察には、ハイスピードカメラのような大きなメモリを有し、高速度な撮影をすることができるカメラの購入をすることなく,振動解析ができるような高いサンプリング(10kHz程度)で力学信号を取得しつつ、画像はCCDカメラ程度の低い周波数(20Hz程度)で取得するシステムを構築する必要がある。

The Solution:
まず、ダイナミック信号収録ボード(NI PXIe-6251)によってロードセルの荷重変動信号および、加速度信号を取得した。 CCDカメラで撮影した画像は、CameraLink画像入力ボード(PXI-1428)によって、12bit画像として取得した。マルチファンクションDAQ(NI PXIe-6251)のカウンターで生成された2つの周波数が異なるパルス信号をトリガーとして両データを取得することで、画像収録と力計測の同期を達成した。得られた画像は、各ピクセルの明度の大きさに赤から青までの色を割り当てることによりカラー画像に変換して、接触面の挙動の変化をとらえやすいようにした。

Author(s):
永井 良治氏 - 横浜国立大学 大学院 環境情報学府 中野研究室

【 背景】 
ゴムなどのエラストマーは、力の伝達や衝撃の吸収に優れており、動力を伝達するベルトや、衝撃を吸収するコンプレッションブッシュなどに利用されている。従って、このような製品には、接触部が存在するが、エラストマーを用いた接触部に水が混入すると摩擦振動が発生する場合がある。摩擦振動とは、摩擦を起因として発生する振動のことをいい、例えば、靴のソールと濡れた床で発生する異音や、雨の日のブレーキの鳴きなどがそれにあたる。これらの摩擦振動は、機械システムの性能を著しく低下させるだけでなく、騒音などの問題になる。そこで本研究では、この摩擦振動の発生メカニズムを解明するために、ゴム/ガラス接触面を有する摩擦システムを構築し、接触面に作用する力の計測と接触面の挙動のその場観察することで、システムにおける動的な力学現象を調査した。

【課題】
上記の研究を達成するためには、まず、接触部に作用する法線力と接線力の同時計測に加えて、接触面のその場観察を行うことができる必要がある。そして、本研究で発生する摩擦振動がとても短い時間スケール(マイクロ秒程度)で発生する現象を内包しているので、両者の信号を完全に同期して計測を行うことが必要である。

また、予算の都合上、その場観察には、ハイスピードカメラのような大きなメモリを有し、高速度な撮影をすることができるカメラの購入をすることなく、振動解析ができるような高いサンプリング(10kHz程度)で力学信号を取得しつつ、画像はCCDカメラ程度の低い周波数(20Hz程度)で取得するシステムを構築する必要がある。従来、予算の都合から独自にトリガー信号を生成するスイッチを作成して、信号収録のスタート位置を合わせて、収録するデータロガーとカメラのクロックが同じであると仮定して実験結果を得るという手法をとっていた。しかし、これは、真に完全に同期したとはいえない。

【ソリューション】
システム構成
本システムのハードウェアを図1に示す。 本実験装置では、ゴム半球とダブプリズム平面で接触面を構成した。接触面の可視化に全反射法を用いることで、接触面に水が存在する場合、直接法で取得できなかった接触縁の明瞭な像を取得できるようにした。ダブプリズム下部に、設置したミラーで反射した光は、ダブプリズムに入射し、ダブプリズム表面において全反射して、実態顕微鏡を介して、CCDカメラに取り込まれる。駆動ステージの上下に、回転ステージを設置することで、駆動方向をかえることができる。例えば、角度を0degに設定すると、摩擦試験となり、角度を90degに設定すると、衝突試験となり、その間の角度では、摩擦と衝突が共存する。これにより、単純な現象から複雑な現象まで、多岐にわたる実験が可能である。ゴム半球の支持部に、2つロードセルを平行に設置することで、法線力と接線力が同時計測できる。法線力は、力の釣り合いから2つのロードセルの和で求まり、接線力は、モーメントの釣り合いから2つのロードセルの差の定数倍から求めることができる。ゴム支持部には、加速時計を設置してあり、音などの原因となる高周波数成分の振動の計測ができる。

本システムのソフトウェアを図2に示す。同図は、画像データおよび荷重変動信号の取得プログラムである。
まず、ダイナミック信号収録ボード(NI PXIe-6251)によってロードセルの荷重変動信号および、加速度信号を取得した。 CCDカメラで撮影した画像は、CameraLink画像入力ボード(PXI-1428)によって、12bit画像として取得した。マルチファンクションDAQ(NI PXIe-6251)のカウンターで生成された2つの周波数が異なるパルス信号をトリガーとして両データを取得することで、画像収録と力計測の同期を達成した。得られた画像は、各ピクセルの明度の大きさに赤から青までの色を割り当てることによりカラー画像に変換して、接触面の挙動の変化をとらえやすいようにした。

LabVIEWを用いてシステムを構築することで、約70%のコストの削減と約25%の実験時間の短縮に成功した。

図1 ハードウェア(写真)

図1(b) ハードウェア(正面図)        図1(c) ハードウェア(上面図)

図2 ソフトウェア

【結果】
実験結果の一例を図3に示す。同図に示すように、無潤滑時と水潤滑時における、明度の違いから、接触面間に介在する水膜の厚さの推定に成功した。また、この水膜は、10Nという静荷重下において、約1000sという時間をかけて排出されることがわかった。

図4に、無潤滑時と潤滑時における、摩擦試験の結果を示す。すると、無潤滑時には、接触面が大変形して、滑らかにすべっているのに対して、潤滑時において、接触面はほとんど変形せずに、摩擦振動が発生していることがわかる。

以上のように、無潤滑時と水潤滑時で力信号および接触面の挙動の両方で大きく異なる2つの結果を得ることができた。また、LabVIEWを用いることで、水潤滑時に接触面に介在する水膜は、固着状態において排出されて、すべりの発生中において水が進入して水膜の厚さが増加することがわかった。このことから、エラストマーを用いた接触部周辺に水が存在すると、大きな接触面に水膜が常に介在しており、水膜の進入と排出を繰り返すことで、静止摩擦係数と動摩擦係数の差が大きくなりやすいことが原因で摩擦振動が発生するのだと考えられる。

図3 実験結果

図4 実験結果

 

 

Author Information:
永井 良治氏
横浜国立大学 大学院 環境情報学府 中野研究室

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