テラヘルツ波時間波形高速測定プログラム(愛称:TewodrosHS)

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"このシステムは、ロックイン検出器等の外部計測器を使わずに従来通りの位相情報も含めたTHz波時間波形の検出を達成し、それによりコストパフォーマンス面でアドバンテージを得ることができました。"

- 柴田 浩昌氏, 大阪市立大学大学院 工学研究科 電子情報系専攻 波動物理工学研究室

The Challenge:
そのため今回は、1. 移動ステージの駆動方式 2.データの集録方式 3.コンピュータ上で行うロックイン検出のルーチンについて見直し、改良を行った。

The Solution:
図1にTHz波の時間波形検出システム(光学系)の概略図を示す。今回、移動ステージは一定距離移動後に停止(測定地点毎に停止)するという方式から、常に移動させ続けるという方式に変更し、移動ステージコントローラ(シグマ光機製:Mark204(MS))から一定間隔(測定地点間距離に相当)で出力されるパルス信号を用いることにより時間遅延情報を得るようにした。

Author(s):
柴田 浩昌氏 - 大阪市立大学大学院 工学研究科 電子情報系専攻 波動物理工学研究室

【背景】
テラヘルツ波(THz波)は近年、物質の分光・イメージング・非破壊検査に代表されるように多くの分野への応用が期待され注目を集めている。この様な応用を果たすためには簡便なTHz波の測定システムの構築が不可欠である。我々の研究室では以前、ナショナルインスツルメンツ(NI)社製信号集録ボード(PCI-4474)とグラフィカルプログラミング環境LabVIEWを用い、ロックイン検出器といった他の測定機器を必要とせず一般的なスペックのコンピュータ内部で処理することでTHz波の時間波形測定を簡便に行うことができる測定プログラムを開発した(http://sine.ni.com/cs/app/doc/p/id/cs-13796)。

このシステムは、ロックイン検出器等の外部計測器を使わずに従来通りの位相情報も含めたTHz波時間波形の検出を達成し、それによりコストパフォーマンス面でアドバンテージを得ることができた。

今回は、以前の測定システムを使用していく中で気づいた課題を中心に測定システムを見直し、同程度の測定SN比を確保し、かつ、THz波の時間波形測定をより高速に行うことを目的とした新たな時間波形測定プログラムを開発した。

【課題】
以前開発した測定システムでは、THz波の波形を得るために、光学遅延器(移動ステージ)を用いてTHz波とゲート光の間にサブ
コ秒(10-13秒)台の時間差を与えて、各時間のTHz波の振幅情報を得ていた。この時、ステージコントローラによって移動ステージを一定距離移動させ、停止するように駆動制御を行っており、この一連の動作に要する時間が測定時間の大半を占めていた。そのため、1000点程度のTHz波の波形データを測定するのに約5分の時間を要し、測定環境の変化による揺らぎの影響を受けやすいという問題があった。

また、以前の方式では、THz波信号検出には、PCI-4474を介してコンピュータ上でロックイン検出を行う際に、光チョッパーの回転周期に同期したTTL信号をトリガーソースとして外部入力端子に入力し、THz波の電圧信号の集録を行っていた。しかしながら、この方式では、PCI-4474の性能上サンプリング時間程度のジッターが発生することが明らかになった。このジッターは、ロックイン検出の際の位相差(特に高周波数での変調時)に影響を与えることから、現れない範囲で変調周波数の設定やサンプリング条件を影響が制限していた。更に、変調周波数成分を得る際に高速フーリエ変換(FFT)を用いるため、サンプリング数を2の乗数(2i)個にし、変調周波数もそれに合わせる必要があった。

そのため今回は、

  1. 移動ステージの駆動方式
  2. データの集録方式
  3. コンピュータ上で行うロックイン検出のルーチン

について見直し、改良を行った。

【ソリューション】
システムの構成

 図1にTHz波の時間波形検出システム(光学系)の概略図を示す。今回、移動ステージは一定距離移動後に停止(測定地点毎に停止)するという方式から、常に移動させ続けるという方式に変更し、移動ステージコントローラ(シグマ光機製:Mark204(MS))から一定間隔(測定地点間距離に相当)で出力されるパルス信号を用いることにより時間遅延情報を得るようにした。

 データ集録方式に関しては、PCI-4474の4チャンネル同時測定可能というメリットを生かし、光チョッパーの回転周期に同期したTTL信号とTHz波の電圧信号を同時にサンプリングするように変更した。これにより、データ集録時に生じるジッターをほぼゼロにすることができた。この時、データ集録を開始するトリガーソースには、移動ステージコントローラから出力されるパルス信号を用いた。測定されるTHz波は振幅に関する電圧信号であり、THz波に寄与する情報は変調周波数成分の振幅と位相に現れる。そのため、信号は正負両方の値を持つことになるので符号の判定(位相のロック)が必要となる。この対応策としては以前の測定システムと同様のアルゴリズムを用い、今回は光チョッパーからのTTL信号とTHz波の電圧信号を両方とも集録し、それぞれの変調周波数成分の位相を用いた。またこの時、変調周波数成分の導出にはFFTではなく、離散フーリエ変換(DFT)を用いて求めた
http://sine.ni.com/cs/app/doc/p/id/cs-13796)。

一般的に、2の乗数(2i)個点のデータ列をフーリエ変換する場合、FFTの方がDFTよりも高速であることが知られているが、ある1点の周波数成分のみを計算する場合に限定すると、DFTの方が計算回数を減少させることができ理論上高速である(図2より、データ点数が1024点の場合、DFTのほうが約5倍高速)。そこで、今回の測定プログラムではロックイン検出に相当するルーチンに予め変調周波数成分に相当する1点のデータをDFTで得るという手法を採用した。さらに、ロックイン処理に相当する計算全てを測定範囲の全てのデータを集録した後にまとめて処理をすることでデータ集録にかかる時間の短縮を図った。この時、測定条件よっては大量のデータ数(例えば、サンプリング数:1000点、データ数:1024点、データ集録に使用するch数:2個だと1000×1024×2≒200万点)を集録・処理することになるので、これに関してはNI社のサイトで紹介されている方法を参考にした
http://zone.ni.com/devzone/cda/tut/p/id/6280)。

今回の測定プログラムはLabVIEW2009を用いて作成し、測定地点数、測定地点間距離(トリガー信号として使用するパルスの出力間隔)、サンプリング周波数、サンプリング数、光学遅延器(移動ステージ)の速度といった測定に必要なパラメータを自由に設定できるようにした。移動ステージの移動速度は、測定地点間距離の移動時間をロックイン処理に必要なデータ点数を集録する時間よりも長くなるように設定する必要がある。ここで、設定ミスが生じた場合はダイアログボックスでその旨を知らせ、プログラムを停止するように設計した。また、一般的な条件で測定するために速度を自動で設定する機能を搭載した。一方で、フロントパネルは測定上不要となる表示や操作を減らし、シンプルになるよう心掛けた。

測定終了後にはTHz波の時間波形をデータとして得るだけでなく、そのフーリエ変換を行い周波数スペクトルを表示させることで、どのようなTHz波を検出したのかが瞬時に判定できるようにした。また、測定したデータを任意のコンピュータに転送する機能も備えている(但し、LabVIEWで作成した受信機必要)。図3は測定プログラムのフロントパネルのスクリーンショットである。尚、測定プログラムの愛称のTewodrosHSは「TEmporal Waveform Of terahertz wave Detection ROutineS 、 High Speed」の大文字部分を取ったものとなっている。

【結果】
最後に、以上のような改良を施した今回の計測プログラムと以前の測定プログラムを用い、測定条件をサンプリング周波数:50kHz、サンプリング数:1000点、変調周波数:3 kHz、データ点数:1024点、時間領域での時間間隔:0。05 psとして比較実験を行った。図4はその時のそれぞれの測定結果であり、図4から以前の測定システムと同等のSN比が今回の測定プログラムでも確保できていることが確認できる。また、測定に要した時間はぞれぞれの測定プログラムで1分7秒と5分17秒であり、約5倍の測定時間の短縮にも成功した。

図1:THz波の時 間波形検出システム(光学系)の概略図。

図2:特定の周波数のフーリエ成分を得る時のDFTとFFTの計算回数の比較。

 

図3:測定プログラムのフロントパネル。

 

図4:測定した時間波形とスペクトルの比較。

Author Information:
柴田 浩昌氏
大阪市立大学大学院 工学研究科 電子情報系専攻 波動物理工学研究室

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