MultisimとUltiboardを使用した電子回路設計製作実習

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"このようにMutlisim・Ultiboardを使用して、学生は卒業までに様々な実習で数多くの回路設計に取り組むことができ、学生にとって必須のツールともなっています。"

- 中村 聡氏, 北海道職業能力開発大学校 生産電子システム技術科

The Challenge:
初めて電子回路設計・プリント基板設計を行う学生にとって、電子回路設計ツールは操作ができるだけ簡単なことが望ましい。高機能なCADは、操作に慣れるまでに時間がかかり学生教育用としては扱いにくいと感じられる。

The Solution:
Multisimは、実習初期段階にパソコン画面を提示しながら説明するだけで、学生は基本的な操作ができるようになる。また、Ultiboadは、実習に必要な一連の手順を記述した簡単な操作手順書を使って基板設計ができる。

Author(s):
中村 聡氏 - 北海道職業能力開発大学校 生産電子システム技術科

1.はじめに

 北海道職業能力開発大学校応用課程生産電子システム技術科では、ものづくり教育の一つとして、電子回路の設計製作に関する複数の実習を実施している。実習では電子CADを使った回路図作成、回路シミュレーション、プリント基板設計、さらに基板加工機を使ったプリント基板加工を行う。平成18年度から、電子CADソフトとして回路図作成・回路シミュレーションにはMultisim、プリント基板設計にはUltiboardを使用している。本稿では、当大学校の電子CADシステムの概要と電子回路設計製作に関する実習例について説明する。

 

2.電子CADシステムの構成

 当大学校の現在の電子CADシステムは平成18年度に導入され、24台の学生用パソコンを配置した3つの実習室で構成されている。この3室を主に専門課程電子技術科(定員20名×2学年)と応用課程生産電子システム技術科(定員20名×2学年)で使用する。回路図作成・回路シミュレーション・プリント基板設計CADとしては、Multisim9・Ultiboard9(1室分のネットワークライセンス)と他社CAD(1室分のネットワークライセンス)の2システムで構成し、ライセンス数の範囲内でどちらも3実習室のどこでも使用できるようになっている。また、Ultiboardで設計したプリント基板を加工するために小型プリント基板加工機を2台設置している。

 Multisim9・Ultiboard9を導入した理由をいくつか示す。まずMultisim9は、マウスを使って直観的に操作できるため、実習の初期段階で1時間ほど一連の基本操作を説明するだけで、学生はマニュアルなしで回路図作成や簡単なシミュレーションができるようになることである。次に、SPICEでのDC解析、AC解析、過渡解析など解析機能が整っていることは当然であるが、さらに、回路図上でLEDが点灯する、スイッチがオンオフできる、計測器を接続できることなど、視覚的に変化するリアルなシミュレーションが可能なことである。

 Ultiboard9は、Mulitisim9とシームレスにネットリストの受け渡しができること、操作が簡便でコンポーネントの配置や配線が直観的にできること、また3D表示ができるため基板の完成イメージがつかみやすいことなどが、学生実習に適している。

 さらに、Mulitisim9とUltiboard9ではデータベースが共通であるため、回路図上のシンボルとフットプリントの対応が取りやすいこと、データベースがMaster、Corporate、Userと3種類あり、実習用にカスタマイズしたパーツデータベースを独自に作成できることも便利である。

 

3.CAD/CAM応用実習

 応用課程生産電子システム技術科1年次の電子回路設計製作に関する実習としてCAD/CAM応用実習(72時間)がある。この実習では、回路図の作成、回路シミュレーション、プリント基板設計、プリント基板製作、動作検証といった一連の作業を通して電子CADの基礎的な使い方や設計製作プロセスを学ぶ。学生はその後の実習において、自ら設計製作した電子回路基板で装置が動作することの喜びを体感することになる。

 専門課程では学生は主に他社CADを使用し、また、一部の学生は応用課程で初めて電子CADを扱う。そのため、最初の数回はMultisimの操作に慣れるため、簡単な数種類の回路図作成や回路シミュレーションを行う。先に述べたようにMultisimは操作が簡単なためパソコン画面をプロジェクタに投影しながら説明するだけで、マニュアルなしでも基本的な操作ができるようになる。なお、一部の応用的な機能については簡易的なテキストを用意し適宜説明している。

 学生にとってはプリント基板の設計製作を行う実習は初めてなので、課題となる回路は、オペアンプを1個(正確には1パッケージ)だけ使用する簡単な回路である。設計する基板は2種類で、1枚はローパスフィルタ回路、もう1枚は増幅回路と発振回路が混在する基板である。回路図作成とプリント基板設計は全学生が同時に行う。一方、プリント基板の加工には時間がかかり同時に作業できる学生数が限られることから、加工作業を行わない学生は回路シミュレーションの課題に取り組むことになる。

 課題例として図1にローパスフィルタ回路を示す。ただし、オペアンプの電源は省いている。プリント基板設計には、回路図作成後各パーツにフットプリントの割り当てが必要である。実習でよく使用するパーツのフットプリントは、コーポレートデータベースに登録してある。シミュレーションの課題では、抵抗やコンデンサの値を変え、AC解析により回路の特性を調べる。なお、図1はプリント基板設計用の回路図であるため、シミュレーションを行うには入力信号源を加えるなど一部修正が必要である。

 

図1 ローパスフィルタ回路

 

Ultiboardを使って設計した回路基板を図2に示す。この実習ではUltiboardの操作法を習得することが目的の一つなので、部品配置や配線パターンは、指定された通りに設計する。なお、基本的な操作手順を記したUltiboardを使った操作手順書を独自に作成している。

 

図2 Ultiboardでの設計基板画面(縦約40mm、横約70mm)

 

図3は設計した基板の3D表示である。Ultiboardの特長の一つとして3D表示が簡単にできることがある。これによって学生は、プリント基板の仕上がりをイメージしやすくなる。

 

図3 設計したプリント基板の3D表示

図4は実際に作成し部品を実装した回路基板である。実習時間の関係で、二人一組で1枚を加工している。加工機は2台あるので、二組の学生がそれぞれ異なる基板を加工する。この基板1枚の加工に要する時間は、加工機の使用方法や安全面の注意事項の説明などを含めて、約1時間半である。基板加工後、Ultiboardで出力した部品表を使って部品を集め実装する。

ローパスフィルタ回路の場合、発振器から入力信号と出力信号をオシロスコープで観測してフィルタ回路の周波数特性を調べ、シミュレーション結果と比較する。ただし、シミュレーションとは異なり回路定数を変えることはできない。

図4 作成した回路基板

4.おわりに

 初めて電子回路設計・プリント基板設計を行う学生にとって、電子回路設計ツールは操作ができるだけ簡単なことが望ましい。高機能なCADは、操作に慣れるまでに時間がかかり学生教育用としては扱いにくいと感じられる。その点、Multisimは、実習初期段階にパソコン画面を提示しながら説明するだけで、学生は基本的な操作ができるようになる。また、Ultiboadは、実習に必要な一連の手順を記述した簡単な操作手順書を使って基板設計ができる。このようにMutlisim・Ultiboardを使用して、学生は卒業までに様々な実習で数多くの回路設計に取り組むことができ、学生にとって必須のツールともなっている。一方、指導する側にとっても、分厚いマニュアルを用意する必要がなく、また課題作成が容易にできることも利点の一つである。

平成21年度に専門課程の学科編成が変わり、定員30名の電子情報技術科がスタートした。そこで、電子CAD用のパソコンを増設が必要となったため、NI Multisim10.1,NI Ultiboard10.1を学部ライセンスで導入した。これにより、現在はライセンス数の制限がなくなり同時に複数の実習室で使用可能となっている。また、100%満足できるとはいえないまでも、Multisim・Ultiboardにはまだ活用していない機能もあるため、今後取り入れ実習をより充実したものにしたいと考えている。

Author Information:
中村 聡氏
北海道職業能力開発大学校 生産電子システム技術科

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