PXIを用いたプラズマ合体実験の制御/392チャンネル同時測定システム

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"今回、PXIシステムを導入し、さらにLabVIEWが既存のICS社製の128チャンネルADCもコントロールできる点を生かし、392チャンネルのデータ収録システムを構築することができました。"

- 神尾 修治 氏, 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻

The Challenge:
プラズマ合体実験を制御する上で不可欠なトリガー同期および392チャンネルにおよぶデータ取り込みを包括して行うシステム構築のため、トリガー信号の送信およびデータの取り込み・表示・保存が重要な課題であった。

The Solution:
システム構成にあたり、NI社製のPXIを選定した。また本研究室既存のICS社製の機器も用い、これをLabVIEWでコントロールした。

Author(s):
神尾 修治 氏 - 東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻

【背景】

エネルギー問題が叫ばれる昨今、本研究室では、核融合炉の実用化に向けた球状トカマクプラズマの研究を行っている。図1に示した本装置は全日本球状トカマク計画研究拠点の中心的位置付けで、合体による球状トカマクプラズマ立ち上げ法の実験的検証を目指しており、研究成果が世界に与える影響は小さくない。

プラズマの生成・合体は多種な磁場発生コイルおよびガス入射によって行われ、1回のプラズマ生成実験にかかる時間は、充電時間5分、プラズマ寿命1ミリ秒、冷却用待機時間5分の10分程度である。本実験装置の目的はプラズマ立ち上げの物理の解明であるため、プラズマの寿命は非常に短い。実験では、ガス入射からプラズマ生成までの数百ミリ秒の間にトリガー信号を送り、プラズマ放電中の数十ミリ秒の測定器からのデータ出力を記録する必要がある。また、待機時間の間にある程度データを処理し、実験の結果を見ながら効率よく必要な実験をしていくことが重要であり、円滑に研究を進めることができる。

 

図1:プラズマ合体実験装置UTST

 

【課題】

実験を円滑に行うために、本システムに は2つの目的がある。

1.トリガー信号の送信

実験では図1に示した真空容器内でプラズマを発生させるため、多数の磁場発生コイルに決められたタイミングで信号を送り、放電をしなければならない。また同時に、各計測器に信号を送り、計測開始のタイミングを決定する。

2.データの取り込み・表示・保存

実験において迅速にデータを処理し、実験結果を受けて次の実験を行うことができるよう、簡易的な確認のためのデータの表示・保存を行う必要がある。本研究では使用するチャンネルの数が多いため、複数のハードからデータを統合し、ソフトを連動させて動かさなければならない。特に、本研究室既存のICS社製デジタイザ(128チャンネル)を活かしたうえでNI社製デジタイザとリンクさせ、データを同時に収録することが本システムの大きな課題である。

 

【ソリューション】

1.システム構成

本システムを構成するにあたり、以下のNI社製の機器を選定した。

  1. PXI-1045: 2台: 18スロットシャーシ
  2. PXI-8108: 1台: WinXP embeddedコントローラ
  3. PXI-8187: 1台: WinXP embeddedコントローラ
  4. PXI-6541: 1台: 32chデジタル出力
  5. PXI-6133: 33台: 8ch ADC

また、本研究室既存のICS社製の以下の機器も用いた。

  1. ICS-645: 4台: 32ch ADC

課題1に対してはPXI-6541を用いることで実現可能とした。時間分解能は10マイクロ秒に設定し、32チャンネルのデジタル出力波形を1秒間に渡ってあらかじめ設定できるようにした。図2に示したパルサ画面において操作を行う。パルスのタイミング・幅を決定し、STARTボタンでトリガパルスを送信する。パルスのタイミング・幅は視覚的に確認することができる。また、STARTボタンの下のタイマーは、放電後に必要な冷却期間である5分を表示している。

図2:メインパート信号出力確認画面

 

課題2に対しては、ICS社のICS-645をLabVIEWでコントロールし、各コントロールPCをVIサーバー機能で通信させることで実現した。具体的に本システムは、以下のような構成(パート)に分かれる。図3に、計測環境の様子を示す。

  • メインパート(18スロットシャーシPXI-1045使用)
    • PXI-8108: WinXP embedded コントローラ
    • PXI-6541: 32ch デジタル出力
    • PXI-6133 x16台: 8ch ADC
  • サブパート(18スロットシャーシPXI-1045使用)
    • PXI-8187: WinXP embedded コントローラ
    • PXI-6133 x17台: 8ch ADC
  • 他社製パート
    • WinXP搭載PC
    • ICS-645 x4: 32ch ADC

図3:各パート本体と操作ディスプレイ

システム全体で32チャンネルのデジタル出力と、392チャンネルのアナログ入力から成る。各パートからのデータを集約するために研究室内LANを形成し、各パートのコントロール用PCに内部IPアドレスを割り振り、SAMBAシステムによりデータサーバ(LINUX)のディレクトリをマウントし、各パートのデータを同じ位置に保存できるようにした。

また、各パートは、STARTボタンを押すことでトリガー待ちの状態になるが、実験ではトリガーにメインパートから出力される信号を用いているため、サブパートと他社製パートのSTARTボタンを押してトリガー待ち状態にしてから、メインパートのSTARTボタンを押す必要があった。この煩わしさを解消するため、VIサーバー機能を用いて各パート間のコントロールパネルに共通のグローバル変数にアクセスできるようにし、メインパートのSTARTボタンを押すだけで他2つのパートのSTARTボタンが自動的に反応してトリガー待ち状態になり、実験をスムーズに行うことができるように改良をした。なお、連動機能が動作中でもサブパート・他社製パートのSTARTボタンを押してトリガー待ちにし、何らかの用途で個別チェックを行うことも可能である。

データ収録は、サンプリング周波数が最大2.5MHz、サンプリング数がおよそ40,000点まで設定することができる。収録したデータは、パートごとにBig Endianのバイナリ形式でそのまま2次元配列を保存している。また、各チャンネルの情報やサンプリング周波数/サンプリング数を記録したテキストデータも合わせて保存している。本システムでは、LabVIEWで統合的にデータ収録を行うことで、他社製のデジタイザからのデータも含めて共通のフォーマットでデータを保存することに成功した。

これらのDAQ画面を図4に示す。この画面では、取り込まれたデータをすぐに波形で表示することができ、実験結果を確認しながら進めることができる。また、独自形式で保存された実験データを読み込みなおすこともでき、過去の波形をすぐに確認することができる。

図4:メインパートデータ確認画面

     図5:サブパートデータ確認画面                        図6:他社製パートデータ確認画面

 

2.結果

  本システムは、32チャンネルのデジタル出力と392チャンネルのアナログ入力から成り、プラズマの合体実験の制御と測定をワンクリックで簡単に行えるようになった。本研究室の目玉となる測定器は、プラズマ領域中の磁気面を直接計測できる290チャンネル磁気プローブアレイであるが、長らく全チャンネル同時に測定できるシステムは構築できなかった。今回、PXIシステムを導入し、さらにLabVIEWが既存のICS社製の128チャンネルADCもコントロールできる点を生かし、392チャンネルのデータ収録システムを構築することができた。そのため全290チャンネルの磁気プローブ信号が同時収録可能となり、プラズマ合体実験から得られる情報が飛躍的に多くなった。以下にその一部を紹介する。

               図7:装置内計測コイル                                                                        図8:磁気計測によるプラズマ合体の様子

 

図7の実験装置内部に設置された黒枠の範囲内の計測コイルにより、図8の様なプラズマが合体する磁気面結果が得られた。これは外部磁場コイルを用いてプラズマ合体を初めて成功させた結果である。

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神尾 修治 氏
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻

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