ディジタル信号処理技術を応用した聴性誘発脳波解析システムの開発

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"従来の C プログラムや MATLAB スクリプトによるモジュールよりもはるかに高速かつ正確に平均加算波形適正を判定することが可能になりました。"

- 井川 信子 氏, 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター 特別研究員

The Challenge:
聴性誘発脳波検査装置のニーズは高いのですが、一方、短くない検査時間や安価でない装置についての改善が課題です。我々はこれまでに、カルマンフィルタによる聴性誘発脳波波形伝達関数推定を用いた、聴性誘発脳波波形推定手法や、離散 Wavelet 多重解像度分解および再構成のアルゴリズムを適用して、短時間で聴性誘発脳波の特徴抽出や波形自動判定をおこなう装置を、LabVIEW を用いて開発しました。

The Solution:
本仮想計測器は、従来の C プログラムや MATLAB スクリプトによるモジュールよりもはるかに高速(少なくとも1/4処理時間)かつ正確に(ABR モデル波形の選択による誤判定がない)平均加算波形適正を判定することが可能になりました。さらに、AABR による自動判定が Ⅴ 波のみのテンプレートに基づいて実施されるのに対し、本手法ではABR 波形伝達関数モデルを用いた全波形の自動判定が可能です。

Author(s):
井川 信子 氏 - 千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター 特別研究員

背景
他覚的聴力検査や脳死判定補助等で広く用いられる聴性誘発脳波の ABR (auditory brainstem response )や ASSR (auditory steady-state response)は近年、新生児聴覚スクリーニングの全国展開などもあり、ニーズが高くなりました。ASSR は変調サイン波の音刺激による、周波数特異性をもった誘発反応のため、聴力の自動判定に活用されています。


課題
聴性誘発脳波検査装置のニーズは高いのですが、一方、短くない検査時間や安価でない装置についての改善が課題です。我々はこれまでに、カルマンフィルタによる聴性誘発脳波波形伝達関数推定を用いた、聴性誘発脳波波形推定手法や、離散 Wavelet 多重解像度分解および再構成のアルゴリズムを適用して、短時間で聴性誘発脳波の特徴抽出や波形自動判定をおこなう装置を、LabVIEW を用いて開発しました。


本研究の目的
本研究ではさらに、この波形解析システムの実用性と精度向上を目指します。特に、山形大学青柳優教授グループが開発された AMFR (amplitude-modulation following response)測定・解析装置に、リオン社が開発された音刺激変換装置を連結し、さらに LabVIEW を用いた、本解析装置のプログラムを改良し、検査時間短縮も実現する並列自動波形判定システムとして組み込み、高速リアルタイム自動判定を実現する計測・解析装置を構築することを目標にしています(図1)。
ここで、AMFR とは、SAM 音を刺激音として用いた ASSR です。


図1 聴性誘発脳波計測・解析システムのブロックダイアグラム


アルゴリズム
ここでは、ABR に適用した場合のアルゴリズムと、実験結果例を、次に示します:
まず、n 回(たとえばn=10)平均加算して得られた ABR 観測波形をもとにしてカルマンフィルタによる波形推定を行う(文末に数式表示)。図2にカルマンフィルタを用いた波形推定のブロック概要図を示す。その際のモデル波形(目的関数)は正常 ABR 波形テンプレートである。その結果得られた推定値とテンプレートとの相関度が、前の n 回平均加算した波形の比較結果より低い値になっている場合、その平均加算波形を平均加算処理に追加しない。この処理を繰り返し、相関度が水準に達した際に処理を終了する。また、図3にこのアルゴリズムを実現するカルマンフィルタサブ VI のブロックダイアグラムを示す。

実験結果例
図4は、タイプ1、2、3-1および3-2の4つの正常 ABR モデル波形を同時に用いて、観測波形の加算の適正判定処理を同時にかつ並列的に実施した結果のフロントパネルの表示例です。各波形グラフ表示では,モデル波形、観測波形(繰り返し加算されている)およびカルマンフィルタによる推定波形の3つの波形を表示しています。この実験例の観測波形は、タイプ3-2のモデル波形に適合し、残りのタイプには適合しないという結果であり、このことが、フロントパネル上に、加算波形の適正を自動判定する処理と同時に、得られています。
図5は図4の左下のグラフを拡大したものですが、従来の、n 回ずつ平均加算した波形とモデル波形(テンプレート)との相関係数の関係を表したグラフです。カルマンフィルタによる推定の結果、デグレードを起こしている観測波形は、前の加算処理の相関係数から折れ線の傾き(微分係数)が負になった場合であり、これを自動的にデグレート加算と判定し、加算波形に加えない判定処理を実施しています。




図2 カルマンフィルタによる波形推定の概要





図3 カルマンフィルタサブ- VI のブロックダイアグラム


図4 ABR の4つのモデル波形に対して並列的に、観測 ABR 波形のタイプを加算処理と同時に推定し、
自動判定を実施するフロントパネルの表示例
(最上段のグラフで 黒:モデル波形、紫:観測加算波形,緑:カルマンフィルによる推定波形)
図5 加算10回から100回までのそれぞれの相関係数値表示:4つの型のモデル波形に対する同時実行による表示結果

 
【表】本手法(LabVIEW仮想計測器)と従来のCプログラムおよびMALABスクリプトによるものの比較



本仮想計測器は、従来の C プログラムや MATLAB スクリプトによるモジュールよりもはるかに高速(少なくとも1/4処理時間)かつ正確に(ABR モデル波形の選択による誤判定がない)平均加算波形適正を判定することが可能になりました。さらに、AABR による自動判定が Ⅴ 波のみのテンプレートに基づいて実施されるのに対し、本手法ではABR 波形伝達関数モデルを用いた全波形の自動判定が可能です。


【数式】カルマンフィルタによる波形推定アルゴリズム


Author Information:
井川 信子 氏
千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター 特別研究員
Japan

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