地震波形の特徴を学ぶための体験型教材

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"視覚的に分かりやすくプログラムを組むことができ、また学習者自らが教材をベースにしてカスタマイズしていくことも可能であるため、VIを構築する演習としても、そのサンプルとして活用することができました。"

- 川方 裕則, 立命館大学理工学部

The Challenge:
地震波形解析プログラムは、コマンドラインでコマンドを打ち込むものが多く、初学者にとっては敷居の高いものであったため、グラフィカル・ユーザーインターフェースによる親しみやすい形態で、基本的な処理機能を備えた体験型教材の開発を行うことで、教育効果の向上を図る必要がありました。

The Solution:
LabVIEWソフトウェアを利用することによって、単一の画面(フロントパネル)ですべての条件設定も結果表示もおこなうことができ、また、繰り返し、異なった処理をおこなうことができるようになりました。

Author(s):
川方 裕則 - 立命館大学理工学部

◆背景

 地震学は、地球物理学の中でも身近な自然災害に直結する学問であり、幅広く興味・関心をひくことができる。しかしながら、大学で地震学を学ぼうとする初学者向けの教科書は少なく、特に実記録に即して、地震波のもつ基本的性質を理解することを促すようなものはほとんどない。

 例えば、地震波には縦波(P波)と横波(S波)があり、縦波は波の進行方向と平行に振動することは、かなりよく知られている。しかしながら地球の内部には細かな不均質がたくさん含まれており、特に短周期の波はまっすぐ進むことができず、散乱を起こし、粒子の振動は波の進行方向と平行でなくなり、ランダムにも見えるような振動を描き出す。このような現象は地震波の性質を理解するうえで、基本的かつ重要な事柄である。

 そこで、本学の学生に上記のような地震波のもつ基本的な性質・特徴を理解してもらうための教材作成が必要と考えた。

 

◆課題

 従来おこなわれてきた、教科書やレジュメといった文字と絵だけの情報だけによる学習では、興味・関心を高めづらく、記憶に残りづらい上、実記録に即した理解を深めさせることは困難である。そこで、教科書やレジュメに加えて、初学者でも実記録を用いて簡便に解析できる体験型の教材の存在が必要であった。しかしながら、防災科学技術研究所などが、インターネットを通じて公開している地震波データは独自のフォーマットを有しており、付随して公開されているソフトウェアは単純な波形表示機能程度しか有しておらず、時系列解析をおこなえるようには設計されていないため、そのままでは教材にはなりえなかった。また、その他の地震波形解析プログラムは、コマンドラインでコマンドを打ち込むものが多く、初学者にとっては敷居の高いものといわざるを得ない状況であった。そのため、例えば、時間積分やバンドパス・フィルターなど、一つ一つの処理を行った結果を図示しつつ、非体験型の資料提示による教育に頼らざるを得なかった。つまり、グラフィカル・ユーザーインターフェースによる親しみやすい形態で、基本的な処理機能を備えた体験型教材の開発を行うことで、教育効果の向上を図る必要があった。

 

◆ソリューション

  • システム構成

 本システムは、既存のインターネットを通じて公開されている地震波形データを利用するため、NI社のハードウェアは使用せず、LabVIEWソフトウェア(ver. 9.0.1)のみを用いて開発を行った。フロントパネルは図1に示すとおり、できる限りシンプルにし、初学者にとって分かりやすいものとなるように心がけた。また、Whileループを使用し、ユーザーが停止ボタンをクリックするまで、何度でもどの機能でも組み合わせて利用できるようになっている。機能としては、必要な教育効果を考え、以下の通りとした。

 

①、波形表示機能(図2左).最も基本的な機能であるが、ファイルパスで指定された地震波形データを読み込み、そのままの状態で加速度波形として水平動2成分(東西と南北)を表示させる。

②、時間積分機能(図2右).防災科学技術研究所のKiK-netによって提供される波形データは、加速度であるが、地面の振動としては、そのほかにも物理的意味のあるものとして速度と変位が挙げられる。地震動は局所的には周期関数と捉えることができ、それゆえ積分をおこない、速度、変位と変換していくことは低周波数側を増幅させることになる。これは、の積分を考えれば理屈の上では分かる話ではあるが、実際に速度波形や変位波形を表示させることで視覚的に理解することができる。

③、粒子軌跡表示機能(図3左).指定された時間帯の2成分の波形をもとに粒子軌跡を表示させる。地震波形は地面の動きを時系列として成分ごとに分解して表示したものであるが、これは地動ベクトルが時々刻々と変化しているものともいえる。この機能においては、2成分の最大振幅絶対値を最上位一桁に切り上げた後に、これをX,Y両成分の表示範囲に指定することにより、最適な等スケールの粒子軌跡を描けるように工夫されている。図3左にP波部分の粒子加速度の軌跡を示すが、波の進行方向と平行に振動しているとは言えず、比較的ランダムに振動している様子が分かる。これは地下の不均質構造による散乱の影響によるものであり、実記録はそのままでは教科書的ではないことがよく分かる。

④、フィルター機能.地下の散乱による影響を取り除くために、フィルター機能を備えさせた。フロントパネル(図1)の右側中ほどにフィルターの選択と切り出す周波数域を指定する部分がある。1Hzよりも高い周波数を除去するローパスフィルターを施した結果、粒子軌跡は図3右のようになる。散乱の影響を受けない長い周期(長波長)の波は一定方向に振動していることがよく分かる。また、震源と観測点を結ぶ方位と振動方位はともに-50度から-52度でよく一致しており、波の進行方向に振動していることがはっきりとわかる。S波部分を切り出した場合でも、同様に波の進行方向と振動方向がほぼ直交していることが確認できる。

 

⑤、波形回転、拡大表示機能(図4).一定方向に振動するようになった波形をその振動方向に回転させることで、1成分にのみ卓越させることができる。これにより、地震波がベクトルの時系列であることを再認識し、このような回転を施すことで、P波が卓越する成分(ラディアル成分)とS波が卓越する成分(トランスバース成分)にある程度分解できることが、経験知として得ることができる。

 

 

  • 結果

 本年度の後期の演習にて使用することを計画しているため、残念ながらユーザーからの反響はまだ得られていないが、概ねデザインどおりの教材を構築することができた。LabVIEWソフトウェアを利用することによって、単一の画面(フロントパネル)ですべての条件設定も結果表示もおこなうことができ、また、繰り返し、異なった処理をおこなうことができるようになった。コマンドを次々に打ち込んで処理をおこなっていくタイプの教材の場合、元の波形に戻ることが困難であったり、これまでにおこなったすべての処理が一目では分かりづらかったりするなど、不便な点があったが、これらの課題が解消された。

 視覚的に分かりやすくプログラムを組むことができ、また学習者自らが教材をベースにしてカスタマイズしていくことも可能であるため、VIを構築する演習としても、そのサンプルとして活用することができる。

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