臨床検査技師養成のための医用電子工学実習にNI ELVIS を利用する

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"導入前に比べて、導入後の学生の成績が有意に向上し、新たな装置の導入は、学生の理解度向上に大きく役立ちました。"

- 北脇 知己, 岡山大学大学院 保健学研究所

The Challenge:
医用物理学や医用工学に関する講義を履修済みの学生に対して、医用電子工学実習を通してより理解を深めることが求められていました。

The Solution:
バーチャル計測装置NI ELVISの導入によって、実習開始前に学生に講義形式で実習に必要な原理を一斉に説明できるようになり、実習内容の理解が向上した上、指導教官からの説明も全員に向けて一回で済むことで学生の待ち時間が減る効果もありました。

Author(s):
北脇 知己 - 岡山大学大学院 保健学研究所

◆背景

 現代医療においては,高度に先進化された医療システムや医療検査装置に対処できる高度な知識と技術を兼ね備えた臨床検査技師の養成が急務です。このため,医用物理学や医用工学等に関する質の高い教育・実習を実現することが必要とされています。

 しかし、臨床検査技師に求められる医用工学の知識や技術内容は大変幅広く、基礎知識や基本的な技術から最先端の技術要素を利用した検査装置の原理まで、限られた時間内で学習を行う必要があります。また、最先端の検査技術は日々研究が進んでおり、新しい技術内容変化に柔軟に対応できる教育プログラムを構築する必要があります。

 こうした中、平成21年度の補正予算で「国立大学の基盤的設備・最先端設備の整備」事業として「質の高い教育研究を支える基盤的・汎用的設備や教育研究の一層の高度化を実現する最先端設備を整備し、教育研究環境の充実を図る」ための予算が措置されたことから、新たな教育プログラムを導入することになりました。

◆課題

 本学医学部保健学科 検査技術科学専攻のカリキュラムは臨床検査技師の養成を目指しており、医用物理学や医用工学に関する講義を履修済みの学生に対して、医用電子工学実習を通してより理解を深める位置づけとなっています。しかしながら、これまでの実習には次のような問題点があり、現有設備の問題から解決が困難でした。

(1) 学生の理解が不十分

 対象学生は実習内容を講義で履修しているため、本来であれば実習内容の十分な知識があるはずです。しかし実際には実習原理などが十分に理解されないまま実習に臨むことが多々ありました。また、実習課題ごとに専用の計測装置を利用するため、学生たちは実習ごとにそれまで操作したことのない計測装置を用いて実習を行う必要がありました。さらに、実習中は計測データの実習ノートへの記録に追われ、学習内容の理解を深めるための実習が十分に機能していませんでした。

(2) 指導教員の負担が多い

 こうした状況の中、指導教員も何とか学生の理解度を向上させようとして、実習内容や装置の操作方法について詳しく説明を行っていました。しかし計測装置や実習設備の制限から、40名の学生を10班に分けてそれぞれが個別の実習をしている中では、毎週別の学生に同じ説明をする必要があり、指導教員の負担が大きくなります。学生同士が相互に教え合う状況も隣の班とは別の実習内容となることから、なかなか起こりづらい状態でした。

(3) 実習内容の不足

 大学の実習予算は限られたものであるため、どうしても限られた範囲の実習しか行えません。そのため、臨床検査技師として理解すべき内容にも関わらず、実習できない内容もありました。例えば、生体センサの不足からセンサ関連の実習が少ないこと、アナログ回路が主でデジタル回路の実習が無いこと、変調・復調回路の実習項目が無いこと、などです。

 こうした課題を抱える中、学生の理解を深め教員の負担を低減するための方策として、なるべく同一の実習を一斉に行うことができないかと考え、まずは余裕設備をできるだけ利用することで、2つの班に同じ実習を行わせて、一回の実習授業中には最大6つの内容の実習で済むようにカリキュラムを組み替えました。この結果、学生に対してなるべく時間を取って詳しい説明を行えるようになりましたが、説明を詳しくすればするほど、他の班の学生を待たせてしまうため、逆にすべての実習が終わるまでの時間が遅くなってしまうジレンマを抱えていました。

◆ソリューション

システム構成

 先に示した課題の解決策として、学生の理解度向上・指導教員の負荷低減(授業時間の短縮)・実習内容の充実、を目指して、NI ELVIS II+ (以下NI ELVIS)とVernier Biomedical Sensors with NI ELVIS (以下 Vernier BMS)をそれぞれ10セット導入し、10班が同一の実習を一斉に行えるようにしました。NI ELVISは仮想的な発振器・定電圧電源などの出力器の機能とオシロスコープ・デジタルマルチメータなどの計測器の機能を併せ持っており、この装置だけで実習に必要な計測系がほぼすべて賄うことができます。またVernier BMSは、これまでの実習で利用していた生体センサ以外にも多数の生体センサを含んでおり、幅広い実習内容の構成が可能となります。

テキスト ボックス: 結果

(1) 装置導入効果

 バーチャル計測装置NI ELVISの導入によって、前述の課題が大いに改善されました。まず、すべての学生に一斉に同じ実習を行うことが可能になったため、実習開始前に学生に講義形式で実習に必要な原理を一斉に説明できるようになりました。この結果、実習内容の理解が向上した上、指導教官からの説明も全員に向けて一回で済むことで学生の待ち時間が減る効果もありました。さらに、実習の進捗にあわせて、実習装置の操作方法の説明や実習上の注意点を、一斉に確認することが可能になりました。

 計測装置についても、オシロスコープ、発振器、直流電源、マルチメータといった様々な出力機器や計測機器が、パソコンから操作可能なバーチャル計測装置で実現されることから、統一された操作感によって学生にとって理解しやすいという効果がありました。また計測データがパソコン上に取り込まれるため保存が容易であり、計測値をすぐにグラフに表示することで、計測上の問題点を早期に発見したり、データを可視化して指導したりといった効果もありました。

テキスト ボックス:  実習内容の拡充についても、NI ELVISにはデジタル回路実習や変調復調回路が用意されており、別の装置を用意することなくこれらの実習を追加することができました。また、生体センサの実習もこれまで3種類のセンサについて実習を行っていましたが、Vernier BMS を用いることで6種類の生体センサの実習が行えるようになり、しかも統一した操作方法で実習が可能になりました。

 こうした装置導入の効果を、100点満点に換算した得点で比較した結果、導入前(レポート:85.3,試験:91.2,総合:86.2)に比べて、導入後(レポート:87.2,試験:93.3,総合:88.2)の学生の成績が有意(p<0.05)に向上し、新たな装置の導入は、学生の理解度向上に大きく役立ったと考えられます。

(2) 装置選定理由

 NI ELVISを選定した理由は2つあります。一つは開発時間です。NI ELVISの場合、導入と同時にインストールされる「仮想計測装置」のソフトを用いることで、あらかじめ必要な出力波形などを用意するだけで、ほとんど手間をかけることなく実習装置として利用できます。また、Vernier BMS の生体センサを用いた計測実習には、「biomedical startup kit」や「vernier biosensors vis」といったソフトウェアが配布されており、こうしたソフトウェアを手直しするだけで、所望の実習を行うことができます。このように実習内容を短時間で開発できるメリットが選定理由の一つです。もう一つは導入コストです。さまざまな実習を一斉に行うためには、実習ごとに必要な機能を持った単機能の計測器を班数分用意する必要があります。このため、むしろNI LVISを10班分用意するコストの方が安くなります。Vernier BMSの導入コストについても、単機能の生体センサを班の数だけ用意するコストよりも安価です。こうした理由から、NI ELVISとVernier BMSを選定しました。

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