fsレーザーを用いたMHA加工システム

  Print Print

"プログラミングに関して全くの初心者が制御系のアイディアをプログラム化し、光学系も含めて約3ヶ月でレーザー加工システムの開発に成功しました。"

- 花岡 直樹, 名古屋大学大学院 理学研究科天体物理学研究室

The Challenge:
fsレーザーを用いたMHA加工システムの開発において、金属面に照射するレーザーの位置は固定されているため, 金属に孔を開けるためには金属薄膜の載るXYステージを、開孔の形状や大きさに合わせて動かす必要がありました。

The Solution:
異なる形状の開孔を任意の格子点に配置するシステムに関しては、BMPファイルの読み込み関数により、各格子点に関する単位構造情報の伝達が可能となりました。また、開孔形状の情報を関数で制御しようという試みは、「Math Script」を用いることで容易に実現しました。

Author(s):
花岡 直樹 - 名古屋大学大学院 理学研究科天体物理学研究室

 

■背景

 金属薄膜に開孔を周期的に配列したものを金属開孔アレイ(Metal Hole Array : MHA)という。MHAに開孔と同程度の波長をもつ電磁波を入射すると、開口率の数倍の透過率が現れる共鳴透過現象が起こる。この現象を利用して、テラヘルツ波帯にて、 入射偏光に依存してイメージが変化するMHAの開発に成功した(図1)。 可視光域への応用が成功した場合、 偏光板などで可視光の偏光方向を変化させるだけで、全く異なるイメージを投影することが可能となる。

 テラヘルツ波とは可視光の約1000倍の波長をもつ電磁波のことをいう。そのため、テラヘルツ波における実験成果を可視光域に応用しようとすると、約1/1000倍の微細構造を持つMHAを作製する必要がある。 必要な単位構造の大きさは数百nm程度である。 そこで、 fsレーザーを使用して1パルスあたり1Wの威力を持つレーザー光を造り出し、 それを金属薄膜に照射することで孔を開ける方法を用いる。 金属面に照射するレーザーの位置は固定されているため 金属に孔を開けるためには金属薄膜の載るXYステージを、 開孔の形状や大きさに合わせて動かさなければならない。 プログラミングに関する知識を持たず、 システムを完成させるまでに設けられた期限は3ヶ月程度であった。そこで、 直感的にプログラミングを行うことができ、デバイスとの接続がスムーズに行えるLabVIEWを使用することにした。

図1、テラヘルツ波の入射偏光の方向によってイメージが変化するMHAの模式図と実験結果。 実験結果は反射光のイメージングによるもの。

■課題

◆我々の目指すMHAは、 周期性のある格子点において、何種類かの単位構造を特定の配置にすることでその機能を果たす。 従って、 格子点の座標それぞれに、 対応した単位構造の形状情報を与えなければならない。 この機構に関しては、 MHAの格子点が周期的に配列されている性質を利用できないかと考えた。例えば、BMP(ビットマップ)などのデータは、画像を格子状の多くのpixelに分割することができる。しかもpixelの一つ一つは色や濃度の情報を数値として持っている。

◆MHAの開孔(単位)構造は、様々な多角形の形を取る。また、図1のようなイメージングをするためには、単位構造の縦横の長さをそれぞれ微小変化させることが条件となる。この微細な構造変化を造り出すために、プログラミングによりXYステージの動きを緻密に制御することが求められる。具体的には、単位構造の形状をあらゆる多角形として設定し、更に図形のサイズや比率を変更可能であるといった、柔軟な制御が不可欠である。

◆実際に駆動させるXYステージはXY座標入力しか受け付けないため、単位構造の形状の指定にはXYステージと連動したアルゴリズムが必要となる。複数の構想の中で、次の方法が有力となった。単位構造をいくつかのパラメータ制御により関数として表すことでインターフェイスの入力時間の短縮を目指す。更に、その関数を座標に変換することでXYステージの制御コマンドに合わせ、駆動させる。

⇒上記に挙げたアイディアが、プログラミングにより実現できるのか。

 

■ ソリューション

▶システム構成

光学系                                                                 

 レーザー光は以下の順で光学素子を通過する(図2)。

1、 凹レンズと凸レンズを使用してビーム径を拡大する。
2、偏光ビームスプリッターとλ/2板でレーザー光の強度を調節する。
3、ビームエキスパンダーで更にビーム径を拡大する。
4、シャッターの開閉をLabVIEWで制御する。
5、顕微鏡に入射し、対物レンズで集光して出力する。
6、顕微鏡のステージ移動をLabVIEWで制御し、 ステージ上の金属薄膜にレーザー光を照射することで周期的な孔を開けていく。

使用したデバイスと接続方法

 シャッター (SIGMA KOKI SSH-C4B) : 232C-USB
   XYステージ (SIGMA KOKI SC101-C) : GPIB-USB-HS

 

図2、光学系の様子。赤線がレーザーの軌跡を描いた線である。レーザー光は様々な光学素子を通過した後、対物レンズでステージ上に集光される。

LabVIEWを用いた制御系                                                                 

 XYステージ制御の構成図を図3に示す。プログラムの核は大きく別けて2つある。1つは特定の形状の単位構造を、格子中の任意の場所に配置するプログラム(図3、中)。 もう1つは単位構造の形状を決定するプログラム(図3、 右)である。

 

図3、 LabVIEWによるフロー制御システムの構成図。 左から第一階層、第二階層、第三階層を表す。第一階層がレーザー加工プログラムのインターフェイスで、以降の階層は第一階層のサブVIとして組み込まれている。(中)の最後の停止コマンドは、グローバル変数によって制御され、第一階層から停止が可能である。

>単位構造の配置個数, 配置場所の決定

 特定の形状の単位構造を格子中の任意の位置に配置する。 これには「BMPファイル読み込み」関数と配列関数を用いた。 BMPファイルの性質を利用する。具体的には、配列関数により、 格子点に各ピクセルを対応させ、 各ピクセルの持つ色(数値)情報を、場合分けされた単位構造の形状に対応させる。これにより、 BMPファイルの情報を読み込むだけで特定の形状を持つ単位構造の配置個数と配置座標を一瞬で入力することが可能となる。

>単位構造の形状決定

 単位構造の形状制御のプログラミングの様子を図4に示す。多角形の頂点を簡単にXYステージに入力する方法として、 LabVIEW8.0から新たに加わった「Math Script」を導入した。 多角形とXY 座標を結びつける最も簡単な方法は媒介変数を用いた楕円の

図4 、 LabVIEW「MathScript」による単位構造の形状制御のブロックダイアグラムとフロントパネル。媒介変数による制御で「頂点の数」の入力値によりあらゆる多角形に対応できる。 回転や縮小を行うことも可能である。

方程式を利用することだと考えたためである。「Math Script」にはlinespaceコマンドがあり、初項(=0)、末項(=2π)、項数(任意)から数列を作り、楕円の方程式を媒介変数表示(X、Y座標)で表すことが可能である。これにより 円周上に等間隔で頂点を配列することができ、頂点の数を入力することで任意の多角形の頂点の座標を出力することができる。また、 計算式を自由に操作できるため式に項を追加することによって多角形の倍率や角度を変更することが可能である。

 

▶結果

◇金属加工システムを約3ヶ月で完成させた。

 プログラミングに関して全くの初心者が制御系のアイディアをプログラム化し、 光学系も含めて約3ヶ月でレーザー加工システムの開発に成功した。 直感的にプログラミング可能なLabVIEWを用いない場合、プログラミング言語を学ぶために半年、アイディアに沿ったプログラミング(関数)を構築するのに1ヶ月、GPIBやRS-232C規格とそれらの制御について学ぶ時間や、バグ取りにかかる時間も必要となる。それと比較した場合通常の2〜3倍の速さでシステムが完成したことになる。

◇「複雑な図形を関数で表す」等アイディアそのままを形にできた

 異なる形状の開孔を任意の格子点に配置するシステムに関しては、BMPファイルの読み込み関数により、各格子点に関する単位構造情報の伝達が可能となった。このシステムが無い場合、一つ一つの格子座標に情報を打ち込まねばならず、MHAの個数が増えるにつれ、 MHAの製作自体が困難になる。

 開孔形状の情報を関数で制御しようという試みは、「Math Script」を用いることで容易に実現した。linespaceコマンドによって楕円方程式の媒介変数表示によるXYステージの移動制御が可能となったためである。これによりいくつかの初期値を入力するだけで全ての多角形を指定することができ、単位構造の縦横それぞれの伸縮、回転をも可能にした。この制御システムによって、多角形のすべての頂点の座標を手動入力する手間が省け、場合によっては数十分かかる入力も数十秒で入力することが可能となった。座標を直接入力する場合と比較すると、作業時間は約1/60程度となる。

 

 グラフィカル言語でありながら「Math Script」の様な数式入力ができることで、簡易入力により複雑で柔軟な制御を行うシステムが約3ヶ月で実現した。また、 後輩への引き継ぎを容易に行うことができた。引き継ぎためのプログラムに関するマニュアル製作に要した時間は1日程度であった。

Bookmark and Share


Explore the NI Developer Community

Discover and collaborate on the latest example code and tutorials with a worldwide community of engineers and scientists.

‌Check‌ out‌ the‌ NI‌ Community


Who is National Instruments?

National Instruments provides a graphical system design platform for test, control, and embedded design applications that is transforming the way engineers and scientists design, prototype, and deploy systems.

‌Learn‌ more‌ about‌ NI