ワイヤレスセンサーネットワーク(WSN)を用いたトンネル工事の落盤防止監視モニタリングシステム

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"NI-WSNを採用することで、3ヶ月以上電池交換のいらない計測装置の実現と無線通信距離100m以上の安定したデータ通信を実現できました。"

- 鰐部 巧哉 氏, 株式会社イー・アイ・ソル

The Challenge:
以下の要件を満たすトンネル工事の際の落盤防止監視モニタリングを構築する。

  1. 100m程度離れた場所でモニタリング出来ること。
  2. 長期間の連続安定監視が出来ること。
  3. 歪センサーへの電源供給トリガを計測ノード側から出力すること。
  4. 出力タイミングを設定し、計測ノードに組み込める事。
  5. 設置が容易なこと。
  6. 短納期(3週間前後)で、納品出来る事。
  7. 3ヶ月以上電池交換のいらない事。
  8. 安価である事。

The Solution:
ワイヤレスセンサネットワーク(WSN)をはじめとするNI製品を使用し、すべての要件を網羅したトンネル工事の落盤防止監視モニタリングシステムの構築に成功。

Author(s):
鰐部 巧哉 氏 - 株式会社イー・アイ・ソル

【背景】
トンネル掘削工事をより安全に行うために、不安定箇所における、いくつかの情報(温度・湿度・岩盤面応力・岩盤面水分量等々)を逐次モニタリングし、異常をいち早く検知して事故が発生する前に処置を施すことが求められます。
 従来から様々な方法でモニタリングを実施していますが、場所が屋外であり、それも特異な場所です。センサ等の設置も掘削場所が移動するたびに移動させる必要があります。コストに見合う安全性確保のモニタリングには自ずと限界がありました。
 しかし、近年、無線通信技術が進歩し、近距離の安定したデータ通信規格がいくつか確立され、ワイヤレスセンサネットワークという言葉も確立されました。この分野で、ZigBeeと呼ばれる規格が、台頭し、ナショナルインスツルメンツ社からもWSN製品群がリリースされました。
 本システムは、お客様より、トンネル工事の際の落盤防止監視モニタリングとして、ご依頼をいただき、製作したシステムとなります。

【課題】
 100m程度離れた場所でモニタリング出来ること。
 長期間の連続安定監視が出来ること。
 歪センサーへの電源供給トリガを計測ノード側から出力すること。
 また、出力タイミングを設定し、計測ノードに組み込める事。
 設置が容易なこと。
 短納期(3週間前後)で、納品出来る事。
 3ヶ月以上電池交換のいらない事。
 安価である事。

<無線遠隔モニタリングの目的>
 危険を伴う工事に於いては、異常を出来るだけ速く検知し、危険回避行動を起こす必要があります。
 今回の対象工事はトンネル掘削作業となり、落盤事故対策がついてまわります。掘削後、壁面にコンクリートを打ち込みますが、常に応力モニタリングして、異常が発生していないかモニタリングが必要です。
 直径数m以上にも及ぶトンネル壁面からワイヤケーブルで信号を何本も引っ張り出してモニタする場合、センサー位置の移動毎にワイヤケーブル対応が発生し、作業性に問題があります。トンネル内部では工事機械やトラックの往来もあり、二次災害にも繋がりかねません。
 そこでワイヤレス通信によるデータ転送でモニタリング出来れば、都度のセンサー位置移動もセンサユニットを個数分、移動固定するだけで、受信基地は電波が届く間はその位置を移動する必要もなく、作業性は格段によくなります。そして、ワイヤがないことで工事機械やトラックの往来の支障も軽減が可能となります。

<WSN (Wireless Sensor Networks)>
ワイヤレスセンサネットワーク(WSN)とは、センサを使用して物理状態や環境状態を監視する自立デバイスが分散されたワイヤレスネットワークです。それらの自立デバイスをノードと呼び、一般的なWSNシステムはノードにルータとゲートウェイを組み合わせて構築します。分散計測ノードは、中央ゲートウェイとワイヤレスで通信します。中央ゲートウェイとは、計測データの収集、処理、解析、表示ができる有線環境への接続を提供する装置です。ルータを使用してノートとゲートウェイの間の通信リンクを追加すれば、ワイヤレスセンサネットワークの距離を延長できるとともに信頼性をさらに高めることができます。

【ソリューション】
 計測装置(計測ノード)は、可搬性を保つため、ニッケル水素二次電池を使用しました。データ収録および通信には、NI-WSN3202を用いました(NI-WSN3202は内部乾電池を使用し、装置異常検知時の通信も確保するようにしました)。
 入力信号は、歪みゲージからの電圧信号ですが、NI-WSN3202では、歪みゲージからの信号を直接取り込めないため、前段信号調節アンプを製作し、シングルエンド信号として使用しました。この時、計測装置全体の電力消費を極力抑えるため、NI-WSN3202が持つ、『センサ電源出力信号』を利用し、信号調節アンプの電源ON/OFFも制御しました。
基地側にはNI-WSN9791(ゲートウェイ)を使用し、汎用ノートパソコンと接続しました。 期間途中、計測ノードとゲートウェイ間の距離が長くなることが予想され、その場合は通信品質を確保する意味で間にリピータを噛ませる事としました。NI-WSNは設定のみで計測ノードとしてもリピータノードとしても利用できる利点を利用しました。

1.システム構成

ハードウエア
 ゲートウェイ WSN-9791 ×1基
 計測ノード WSN -3202 ×8基
 リピータノード WSN -3202 ×1基
 信号調節アンプ お客様ご用意
 センサ 歪みゲージ 最大32個

ソフトウエア
開発環境
 LabVIEW2009SP1
 NWSN1.1
 LabVIEW WSN module Pioneer 2009 SP1
 NI WSN IOV API

<システム構成図>

 

2.システムスペック

計測ノード仕様(8台構成)
 アナログ信号入力チャネル数 4 ch(3 2ch)
 サンプリング間隔(1分)
 1回の充電で使用出来る期間3ヶ月
 通信距離300m(※現場状況により変化)

設定
 ZigBee使用CH選択(NI-MAXにて)
 グラフ表示チャネル選択(32ch中4ch同時表示)
 データロギング間隔(1分/10分/60分)
 ログファイルのCSV形式出力

全体機能
 通信異常検知
 計測タイミング信号出力
 GatewayとPCの時刻同期

測定
 サンプリング間隔 1分
 サンプリング分解能 16bit
 測定チャンネル 最大32 ch ノード数最大8台

3.特徴

3.1.自律計測
 NI-WSN計測ノードは自律型の計測装置です。計測ノードに独自のプログラムを組み込んで計測実行できます。この仕組みを利用し、今回は計測サンプリングレートを60秒に固定しました。また、計測ノード自体が動作中なのかを明確にするためにサンプリングタイミングでLEDを1秒ほど点灯させることにしました。このことで期待したプログラムが動作しているかどうかの判断が出来るようにしました。
 プログラム自体は、普段使い慣れたLabVIEWダイアグラムでのコーディングで可能です。これがCのコードに変換されTIのコンパイラを介してbitファイルにされ、計測ノードにダウンロード・実行されます。開発自体ターゲットデバイスをほとんど意識しなくても実現できました。

<計測ノード:測定・出力タイミングチャート>

3.2.基本機能
NI-WSNは基本的なEvent処理の仕組みが組み込まれており、指定されたEventCase内をコーディングする事になります。また、ZigBeeの通信に関しても意識することなくメッセージ通信と決められたデータ送信に固定されています。用意された基本機能の中で実現するコードは開発期間を短縮し、安定した動作実行を可能としました。

3.3.低コスト
NI-WSNはプログラマブルな計測モジュールに通信モジュールが組み込まれ、とても安価な計測ノードとして提供されています。
また、先述の通り、基本機能の中で実現可能となる為、開発期間の短縮が可能となります。

NI-WSNの利用用途案
 温度・湿度・風力・風向・日照等、あらゆる信号を一つにまとめ、ロギング・監視を行う環境モニタリング。
安価な太陽光パネルとバッテリーを用いて、自家発電~外部電源とする事で、センサー側の電源供給に使用する事も可能となる。
 建物・構造物の長時間ヘルスモニタリング
 屋外ハウス内温度・湿度の測定・ロギング・通信と、調節制御
 追加配線を伴わない工場内の状態(温湿度・照度等)監視と、調節制御

その他、屋内外に限らず利用できる電波(ISMバンド)を使用しているので、様々な遠隔長期間モニタリングでの用途に使用ができると考えます。

【今後の発展性】
 現在NI-WSN計測ノードでは、電圧入力および熱電対入力に対してモジュール化されています。
本件のように電圧入力前段に信号調節アンプを置くことで、様々な信号を扱うことは可能です。端子台と一体化した信号調節アンプを内製することでよりフレキシブルな計測環境を実現することが可能になります。
 計測ノード内には248Kバイトのユーザメモリが用意されています。通信品質が保てないケースでも、常に計測データを内部留保して、通信品質が回復した時点でデータログのリカバリをし、時系列データの完成度を上げることが期待できます。
 10分に1度のサンプリングで、約50日分のデータを、計測ノード側に保存する事が可能です。また、NI-WSNには接点出力が最大4点用意されており、計測ノード内部に予め判断プログラムを格納できますので、計測ノード側でのアラート発信も可能になるかと考えます。

【まとめ】
NI-WSNを採用することで、3ヶ月以上電池交換のいらない計測装置の実現と無線通信距離100m以上の安定したデータ通信を実現できました。

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