航空機構造材料CFRPの超音波探傷試験の体験と理解

  Print Print

"従来の探傷システムは、高周波形出力装置・入力装置・波形分析計算機・ディスプレイ出力装置など計1、000万円以上の費用がかかった。NIのPXIシステムで構築することで、200万円程度の費用で構築でき開発費大幅な削減が可能となった。"

- 松崎 亮介 助教, 東京工業大学 機械物理工学専攻

The Challenge:
従来販売されていた超音波探傷(超音波を用いて材料中の欠陥を探す)専用システムは、非常に高価であり、またシステムの変更が容易でないことが問題となっていた。

The Solution:
National InstrumentsのPXIシステムを用いてより汎用性の高い測定システムの構築を実現。

Author(s):
松崎 亮介 助教 - 東京工業大学 機械物理工学専攻

1. 背景
非破壊試験(Nondestructive test、 NDT)あるいは非破壊検査は、材料や製品を破壊せずに、欠陥の有無、その存在位置、大きさなどを調べる試験であり、非破壊試験の結果から、JIS規格などに定められた判断基準に従って構造物が健全であるかどうかを判断する。非破壊検査する手法として、超音波探傷試験(Ultrasonic test、 UT)がよく用いられる。超音波探傷とは、超音波を種々の材料や溶接部の中に入射して、欠陥による反射、散乱を利用して、欠陥の有無、大きさを調べる試験方法である。本実験では複合材料積層板はく離の超音波探傷試験を実施し、機器の構造健全性を保証することを目的とする。

しかしながらこれらの検査を行う場合、高周波形入出力・波形分析計算機・ディスプレイ出力装置など計1,000万円以上の設備が必要となり、手軽に操作や物理的背景を修得するのには適さない。ここでは東京工業大学・機械宇宙学科学生実験で超音波探傷試験を体験し物理背景を理解することを目的として、National Instruments社製PXIを用いたシステムを利用した例について報告する。本システムを利用した授業は平成19年度に東京工業大学機械宇宙学科を対象とした機械宇宙学実験第2(学部3年前期)で実際に行われ、平成23年度前期にも取り入れられる予定である。

2. 課題
超音波探傷法は、超音波を用いて材料中の欠陥を探す方法であり、一般に超音波の反射を利用したパルス反射法が用いられる。このパルス反射法を用いた超音波探傷試験は、超音波パルスを試験体の表面(探傷面)から垂直に伝わせる垂直探傷試験と、ある角度を持たせて斜めに伝わらせる斜角探傷試験が主に行われ、試験体の形状や検査をする箇所により使い分けられる。

垂直探触子から入射した超音波パルスは、探傷面と垂直な方向に試験体の中を伝搬していく。このとき超音波パルスは、ある限られた方向に、限られた範囲(幅)で、ビーム状に試験体内を伝搬して行き、反射源に当たると戻ってくる。戻ってきた超音波パルス信号(反射波)をエコーといい、これらは探傷器の表示器上に探傷図形として表示される。ここで、探傷図形の縦軸は反射波の強さ(エコー高さ)を示し、横軸(時間軸)は反射源までの距離(ビーム路程W)を示している。横軸目盛りのフルスケールを測定範囲という。

探傷図形には、超音波の送信パルスTと、きずからのエコーF、試験体底面のエコーBが表示されている。横軸の0目盛りは試験体の表面に調整されているので、きずエコーFのビーム路程WFからきずの深さ位置が、底面エコーのビーム路程WBから試験体の板厚がわかる。

炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層板の層間はく離を非破壊検査対象とする。CFRPは炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグとよばれる厚さ0。2mm程度のシートを多数積層したのち、硬化させることで成型する。繊維方向に比べて板厚方向の強度(層間強度)が著しく低いため、工具落下などの衝撃により容易に層間にき裂が発生し、圧縮強度・剛性の低下を引き起こし問題となっている。実験では、JIS K7078に準拠して炭素繊維強化プラスチックの層間せん断試験を実施することで、CFRPに層間はく離を発生させる。
 従来は超音波探傷専用にシステムが組み込まれて販売されていたが、非常に高価であり、またシステムの変更が容易でないことが問題となっていた。より汎用性の高い測定システムをNational InstrumentsのPXIシステムを用いて構築する。

3. ソリューション
3-1. システム構成

超音波探傷試験には探傷器(波形送受信、波形の表示および調整)と探触子が必要である。探傷器として図1に示すNational Instruments社のPXIシステムを用いて

・波形送信に100MS/s、16ビットの任意波形発生器PXI-5421
・波形受信に100MS/s、14ビットデジタイザPXI-5122
・波形の出力・取得と波形解析はPXIシステム上のLabVIEWを用いて実行。

探触子にはPanametrics-NDT社の5MHz探触子C543-SMを用いた。図1に装置外観、図2にブロックダイアグラムを示す。

 

図1 CFRP超音波探傷システム外観


図2 CFRP超音波探傷システムダイアグラム

3-2. 結果

下記の要領で探傷を行った。
(1) 送信パルス波形状をエクセルで作成する。公称周波数5MHz、サイクル数1。5~3、振幅1のsin波形とする。ただし、このパルス波を探触子に加えてエコー受信すると波の始まりと終わりの振幅が乱れる。そこで、次式に示すハニング窓を掛けたものを入力波形とする。区間は[0、1]とする。

 

(2) 波形受信のためのトリガー設定を行う。
(3) 超音波を探触子から試験体に効率よく伝えるため、炭素繊維強化プラスチック積層板の表面に超音波用接触媒質(グリセリンペースト)を塗布する。
(4) パルス波を積層板に対して送信し、底面波、反射波が正しく得られているか確認する。
(5) 探触子を試験片端部から長手方向に2 mmずつ移動させ、各点において超音波探傷波形を取得する。次に幅方向に2 mm移動させ再び長手方向に2mmずつ走査を行う。試験片全体を走査するまで繰り返す。


図3 入射波形(任意波形発生器PXI-5421により送信、14ビットデジタイザPXI-5122で受信)

4. まとめ

・従来探傷システムは高周波形出力装置・入力装置・波形分析計算機・ディスプレイ出力装置など計1,000万円以上の費用がかかった。NIのPXIシステムで構築することで、200万円程度の費用で構築でき開発費大幅な削減が可能となった。

・従来探傷システム構築は、複数装置の複雑な接続構成が必要であり、それらを繋ぐプログラム構築の労力が大きかったが、PXI+LabVIEWを用いることで、LabVIEW上で波形入出力からディスプレイ表示まで一体で構築可能となった。

・これにより短い開発期間(2カ月)で開発に成功し、設計自由度の向上と、あとからのシステム変更も容易に可能になった。

・入力波形によって探傷結果が変化するかなど、学生自らその場で触りながら学ぶことを直感的に出来ていた。装置やプログラムの習得にかかる労力を最小化し、物理現象理解と考察に割く時間を最大化できた。

 

Bookmark and Share


Explore the NI Developer Community

Discover and collaborate on the latest example code and tutorials with a worldwide community of engineers and scientists.

‌Check‌ out‌ the‌ NI‌ Community


Who is National Instruments?

National Instruments provides a graphical system design platform for test, control, and embedded design applications that is transforming the way engineers and scientists design, prototype, and deploy systems.

‌Learn‌ more‌ about‌ NI