タイヤと路面間の制動トルク自動計測システム

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"LabVIEWのプログラミングガイドブックで多少勉強した程度であったが、直観的に分かりやすいグラフィカルプログラムであったため、今回のプログラムの作成を2週間で行うことができた。"

- 菅野 雅信 氏, 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻

The Challenge:
タイヤに粘着剤を塗布することによって交通事故を減らせるというアイデアを実証するうえで、以下の要件を満たしたシステムを構築する。

  • 粘着剤の効果を示すために、リアルタイムで計測できるシステムの構築
  • 再現性が高い計測システムの構築
  • 短時間でのプログラム製作
  • 国内外でのデモンストレーションに対応できるコンパクトなシステムの構築

The Solution:
実験時の計測・制御には、DAQcardおよびCompact RIOを、ソフトウェアの開発には、LabVIEW 8.6を用い、すべての要件を満たすシステムの構築を実現した。

Author(s):
菅野 雅信 氏 - 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻

1. 背景
平成19年の交通事故発生件数は832、454件で、ピークの平成16年(952、191件)から減少の傾向にあるが[1]、依然として年間5、000人以上の人が交通事故で亡くなっており、憂慮すべき状況にある。統計によると交通事故の大半は追突や出会い頭の衝突によって起こっており[1]、ドライバーは急な飛び出しや、前車の急停止に対して急ブレーキをかけて衝突を回避しなければならない。走行している車両が停止する際には速度に応じて停止距離が長くなるが、この距離が短縮できれば、衝突の回避、あるいは衝突時の衝撃軽減につながる。

しかし、自動車のディスクブレーキ装置は、タイヤを簡単にロックさせてしまうほどの制動力をもってはいるが、タイヤと路面の最大制動摩擦力を越す制動力は得ることができない。またタイヤのグリップを上げるとタイヤの寿命が短くなるため、安易にタイヤの摩擦力を上げることも難しい。
そこで、車両の急制動時にタイヤと路面の間に粘着剤を塗布することによって、一時的に最大制動摩擦力を高め、停止距離を短縮するシステムを考案した。この粘着剤による制動距離の短縮効果を実証するために、ディスクブレーキを搭載した1/10スケールモデルのラジコンと、路面を模擬したモータを使用し、実車に近い実験装置を製作した。
ディスクブレーキに与えるトルクと接地面で発生する制動トルクとの関係をリアルタイムで調査するために、実験のデータ集録および制御デバイスとしてNI製品を用いた。これによって、リアルタイムで粘着剤の効果を示す自動計測システムを構築することができた。

2. 課題
本実験の目的は、タイヤに粘着剤を塗布することによって交通事故を減らせるというアイデアを実証することである。また、審査員や関係者の前でデモンストレーションを行うため、リアルタイムで計測制御でき、再現性が高い装置であることが望ましい。しかし、実験システムの構築にあたって、ハードウェアの設計・製作に時間を要したため、自動計測プログラムを短時間で構築しなければならない状況にあった。また、国内外でデモンストレーションを行うためにも、コンパクトで組立容易なシステムにする必要があった。
従って、要求される課題は以下の点にある。
・ 粘着剤の効果を示すために、リアルタイムで計測できるシステムの構築
・ 再現性が高い計測システムの構築
・ 短時間でのプログラム製作
・ 国内外でのデモンストレーションに対応できるコンパクトなシステムの構築

3. ソリューション
 3-1. システム構成
実験時の計測・制御には、DAQcardおよびCompact RIOを用いた。また、ソフトウェアの開発には、LabVIEW 8。6を用いて行った。
 実験装置の外観及び計測制御システムの概略図を図1、2に示す。DAQcardからの制御信号を用いてモータに起動トルクを与えると、モータが一定の回転数で回転する。モータの回転数はDAQcardを用いて計測する。モータが回転することで、タイヤが回転し、タイヤの回転はプーリを通じて車体に取り付けられたロータリエンコーダに伝わる。タイヤの回転数はCompact RIOを用いて計測する。一方、ブレーキシステムに関しては、Compact RIOを用いてサーボにPWM制御信号を送ることで、ディスクブレーキに制動トルクが発生し、この制動トルクによってタイヤと路面の間に摩擦力が発生する。このとき、モータに与えたトルクに対して、制動トルクが大きかった場合、モータは所定の回転数で回転できなくなり、この前後で、Busy(エラー信号)が発生する。このBusyが発生した瞬間検知することで、モータトルク値のデータ集録を行う。
 以上の原理から、ブレーキ操作量と制動トルクのグラフをリアルタイムに表示する自動計測システムを構築した。図3に自動計測フローチャートを示す。モータに十分大きなトルクを与えてタイヤを回転させた後、徐々にトルクを減少させていくとBusy信号が発生する。このBusy信号が発生した瞬間のモータトルク値をデータとして集録し、グラフに出力する。タイヤと路面のスリップ率がロックしそうな状態であるか判定し、そうでなければサーボ指示値を大きくし、同じようにモータトルク値を集録していく。この計測シーケンスをLabVIEWに実装することにより、計測開始ボタンひとつ押せば自動でリアルタイム制御、データ計測、グラフ出力を行ってくれる実験システムが完成した。
実際にリアルタイムでデータ集録を行った結果を図4に示す。粘着剤を塗布することによって、制動トルクが向上していることがわかる。また、粘着剤を塗布しない場合は、サーボ指示値を970程度にするとタイヤがロックするような状況であったが、粘着剤を塗布することで、サーボ指示値を1010程度まで高めてブレーキを強く掛けてもロックすることがなかった。その結果、粘着剤によって最大制動トルクが大きく向上した。このように、今回構築したプログラムによって、粘着剤による効果が一目瞭然でわかるシステムを構築することができた。

図1 実験装置外観


図2 計測システムの概略図


図3 自動計測フローチャート


図4 制動トルク測定結果

 3-2. 結果
 DAQcardおよびCompact RIOを用いることで、タイヤと路面間の制動トルクをリアルタイムに自動計測する再現性の高いシステムを構築することができた。
 プログラムの構築に関しては、LabVIEWのプログラミングガイドブックで多少勉強した程度であったが、直観的に分かりやすいグラフィカルプログラムであったため、今回のプログラムの作成を2週間で行うことができた。
今回用いたNI製品は総計3kg程度と軽量であり、電源も海外対応であるため、海外の国際大会でのプレゼンテーション時も日本と同様のシステムを用いて行うことができた。

参考文献
[1] 警察庁交通局、平成19年中の交通事故、(2007)

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