アナログ疲労試験機の再生と高機能化

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"提案手法が従来手法と比較して非常に安価であるのに加え、提案手法では、機能回復のみならず、静的強度試験機能追加と制御系のデジタル化によるフレキシブル性向上も実現しており、費用対効果はさらに良好となる。"

- 勝俣 司 氏, 東京工業大学 大学院理工学研究科 機械物理工学専攻 轟・水谷研究室

The Challenge:
故障した制御系の代替とデジタル化を行い、疲労試験のみならず、静的引張・圧縮試験の機能の付与、およびプログラマブル化によるフレキシブル性向上によって、試験機の再生・高機能化を実現する。

The Solution:
PXIとLabVIEWを用いたシステムによって疲労試験機のデジタル制御化,および静的荷重試験機能の付与を可能とし,疲労試験機の再生・高機能化を実現した.

Author(s):
勝俣 司 氏 - 東京工業大学 大学院理工学研究科 機械物理工学専攻 轟・水谷研究室

1. 背景

 様々な研究・開発分野において,材料試験は重要な試験の一つである.代表的な材料試験として静的強度試験が挙げられる.これは材料の引張強度,圧縮強度,曲げ強度等を求めるものであり,機械,航空宇宙,電子,化学,建築,食品等の分野において必要とされる.また,特に機械,航空宇宙といった分野においては,疲労強度も重要な特性であることから,疲労試験も広く行われている.

 これら材料試験を実施する上で,強度試験機が必要となる.強度試験機は,通常油圧,ないし電動による可動式のクロスヘッドを備えており,底部とクロスヘッドの間に試験片を設置して試験を行う.また,クロスヘッドにロードセルが備えられており,荷重を測定する.

 このような試験機は非常に高価であり,試験機本体と付属品を含めて400万円~1500万円程度で販売されている.さらに,試験片を固定するチャック,制御ソフトウェア等も含めるとさらにコストが増大する.従って,このような試験機を頻繁に更新する事は難しく,コスト的な観点から製造後数十年経過した試験機を使用せざるを得ない場合も多い.このような試験機は基本的にアナログ制御であり,荷重パターン,サンプリングレート,収録チャンネル数等の自由度に制限があることが問題となる.また,記録媒体が紙であることから,PCを用いた研究開発が一般化している現代においては,作業の効率化を阻害する要因となる.

 このような試験機に対して,メーカー側では制御装置の更新サービスを提案しているが,オーダーメイド形式であり,これらも数百万円を要し,非常に高価であるという問題点が存在する.

 以上のように,旧式化したアナログ試験機を再生・高機能化することが研究開発現場において求められている.

 

2. 課題

 アナログ試験機の再生・高機能化を図る上で,制御系をデジタル化することが望ましい.これは,以下のメリットを有するためである.

  • ソフトウェア的な処理によって機能を付随することが可能になる
  • 電子データによる出力が可能となる

 この目的を達するために,高い汎用性とプログラマブル性を備えるPXIとLabVIEWを使用することが有効と考えた.これは,制御系のデジタル化に加えて,以下のメリットが存在するためである.

  • 他の付随機器無しに,多数の信号入出力,およびデータ収録・出力を一元管理することが可能になる.
  • 制御プログラムの構築が容易であり,要求機能を短時間で付与することが可能である.

 製作に当たり,疲労試験機の再生・高機能化のテストベッドとして,当研究室において制御機の故障のために使用停止の状態にあったMTS社製油圧疲労試験機を使用する.機能を回復するためには,制御機の基板交換が必要であるが,この試験機は製造後30年以上経過しており,アフターサービスが殆ど受けられない状態にあった.また,機能自体も近年の製品に比べると大きく制限されており,荷重パターン等,試験の自由度が低いといった問題が存在した.そこで,PXIとLabVIEWを使用し,故障した制御系の代替とデジタル化を行い,さらに疲労試験だけではなく静的引張・圧縮試験の機能の付与,およびプログラマブル化によるフレキシブル性向上によって,試験機の再生・高機能化を実現することを目標とした.

 

3. ソリューション

3.1 システム構成

 対象とした疲労試験機は,MTS Model 312.31であり,最大荷重は250kNである.この試験機は,MTS Model 810アナログ制御機によって制御されており,制御機と疲労試験機本体との通信はアナログ信号によって行われている.そこで,荷重および変位指令信号の送受信をLabVIEWによって行うことで,以下の機能を付与する.

  • 疲労試験・静的荷重試験の実施機能
  •  試験データの電子データによる記録
  • ソフトウェア的な安全装置
  • ひずみゲージ等のデータ用チャンネル

 制御系の構築に当たり,LabVIEW7.1を使用した.プラットフォームとしてPXI-1042汎用8スロットシャーシを使用し,制御信号の入出力には,PXI-6070Eマルチファンクション

図1 ソリューション・システム図

DAQボードを前述のシャーシに組み込んで使用した.また,このボードとTBX-68 I/Oコネクタ・ブロックを接続し,TBX-68を介してPXI側と試験機側を接続した.PXI側から試験機への出力は以下の通りである.

  • 試験機への変位・荷重制御信号

 同様に,試験機側からPXI側への入力は以下の通りである.

  • ロードセルからの荷重信号
  • ロードセルからの変位信号
  • その他付加信号(ひずみゲージ出力等)

 これらの信号の入出力を図1に示す.

 制御信号出力に際し,ロードセルからの信号入力値にローパスフィルタをかけた上でノイズを除去し,必要な変位・荷重データを取得する.その上で,P制御によるフィードバックを行い,適切に目標の変位ないし荷重を維持できるように信号出力を設定した.

 図2に,本システムのフロントパネルを示す.また,以下にその機能を示す.

1.         開始ボタン:STARTに設定することで,実験開始可能になる.

2.         設定ボタン:荷重・変位のレンジ,変位速度,サンプリングレートを設定する.MTS Model

図2 フロントパネル

3.         810側の設定と一致させる.

4.         リミット表示:大きな荷重変動により材料が破壊したと判定されて停止した場合,および変位が設定したレンジの限界に達して停止した場合に表示する.

5.         経過時間表示

6.         モニター部:ロードセルからの荷重・変位出力を表示する.

7.         保存表示:測定データをtxtファイルに書き込んでいることを示す.

8.         緊急停止ボタン

9.         制御信号解除ボタン:制御信号の出力のみをOFFにする.システム状態チェックに用いる.

 

3.2 結果

 本システムの機能を確認するために,実際に試験機を作動させ,圧縮試験を模擬した動作確認試験を行った.試験は,600秒間試験機を一定の変位速度0.1mm/minで作動させるも

のである.また,クロスヘッドの変位量を測定するために,ダイヤルゲージを装着して測

定を行った.この結果を表1および図3に示す.表1は,600秒経過後の変位量を示してお

り,ロードセルによる測定値およびダイヤルゲージによる測定値である.

 この結果より,両者がよく一致しており,適切に試験機を制御できていることがわかる.また,図3より,変位速度も一定の値をとっていることがわかる.以上より,本システムによって疲労試験機のデジタル制御化,および静的荷重試験機能の付与を可能とし,疲労試験機の再生・高機能化を実現した.

表1 600秒経過後の変位量

ロードセル

ダイヤルゲージ

1.033 [mm]

1.02 [mm]

 

図3 動作確認試験結果

 

 表2にコストの比較を行う.この結果より,提案手法が従来手法に比して非常に安価であることがわかる.さらに,提案手法の場合,機能回復のみならず,静的強度試験機能追加と制御系のデジタル化によるフレキシブル性向上も実現しており,費用対効果はさらに良好となる.最新の試験機には機能が劣るものの,このような試験機は単価が1000万円前後であることから,やはり提案手法が費用対効果に非常に優れていることがわかる.

 次に,表3において,開発期間の比較を行う.この結果に示されるように,開発期間に

おいても提案手法が有利である.

 以上のような提案手法のメリットは,LabVIEWの高いプログラママブル性と,PXIの高い汎用性の寄与が大きいと考えられる.

 

表2 コスト比較
従来手法 提案手法
品目 価格[\] 品目 価格[\]
メーカー修理 2,100,000 PXI-1042 283,000
    PXI-6070E 359,000
    TBX-68 21,000
    LabVIEWベースパッケージ 184,000
2,100,000 847,000

 

 

表3 開発期間比較
従来手法 提案手法
品目 時間[ヶ月] 品目 時間[ヶ月]
メーカー修理(含運送時間) 3.0 システムセットアップ 0.3
キャリブレーション 0.5 プログラム構築 1.0
    性能確認 0.2
       
3.5 847,000

 

4. 結言
 提案手法によって,疲労試験機の機能再生,フレキシブル性向上および静的強度試験機能の付与を実現した.また,従来手法に比してコストの大幅低減と開発期間の短縮が実現された.

 今後は,さらに特殊な高サイクル疲労試験といった特殊な荷重パターンにも対応可能にする改良を行う予定である.

 

 

 

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