PXIモジュール式計測器とNI LabVIEWを使用した次世代画像診断システムによる癌の先端研究

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"同期機能を備え、小型でモジュール性に優れたナショナルインスツルメンツ社のPXIプラットフォームにより、多チャンネルのデータ集録システムを実現することができました。"

- Dr. Kohji Ohbayashi, Kitasato University, Center for Fundamental Sciences

The Challenge:
健康診断時に癌を発見する医療機器を開発し、従来の(解像度が十分でなかったり、検診時に患者に過度のストレスがかかってしまう)方法を改善する。

The Solution:
北里大学の研究グループは、オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー(OCT: Optical Coherence Tomography)に、ナショナルインスツルメンツ社(以下、NI)製の高速(60 MS/秒)データ集録システム(256個の同時入力チャンネルを搭載)を使用して、超高速周波数領域OCTのプロトタイプシステムを開発し、世界中で最も高速での撮像が可能なOCTシステムを実現しました。NIのPXIプラットフォーム(今回使用したのはPXI-5105 デジタイザ)の持つ同期機能、小型・モジュール式という特長を生かし、多チャンネルのデータ集録システムを実現しました。

Author(s):
Dr. Kohji Ohbayashi - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
D. Choi - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
H. Hiro-Oka - Kitasato University, center for Fundamental Sciences
H. Furukawa - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
R. Yoshimura - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
M. Nakanishi - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
K. Shimizu - Kitasato University, Center for Fundamental Sciences

OCT概論

オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)は、透明な素材や不透明な素材の表面下の断面画像を撮像することのできる、非侵襲画像診断技術です。OCT画像では、ミクロン程度の解像度で細胞組織などを確認することができます。OCTは、学会でも注目されるようになってきています。その理由は、MRIやPETなどといった画像診断技術よりもはるかに優れた解像度で画像を表示することができ、生体検査のように生体の一部を切り出してサンプルを用意する必要がないだけでなく、使用されるレーザー出力も弱く、X線のような放射線を必要としないことから、患者にとって非常に安全な診断方法である点にあります。

OCTは光を測定対象物に当て、反射して戻ってきた光を用いて画像を作るもので、超音波に似た手法ではありますが、音の代わりに光をモニタリングします。光を対象物に当てると光の多くは散ってしまいますが、ごくわずかな光が平行ビームとして反射します。これを検出して画像を作成します。

ハイレベルシステムの概要

高速フーリエドメインOCTシステムを開発するためには、192.2 THz (波長:1559.8 nm)を中心とした25.0 GHzの周波数間隔でブロードバンドの入射光から256の狭スペクトル帯域を分離させるという課題がありました。光デマルチプレクサを用いてスペクトル分離を行うことにより、全帯域を同時に検出できるようになりました。これには、NI PXI-5105(デジタイザ)を32枚用いてチャンネル数を256にまで拡張し、各チャンネルに搭載されている60 MS/秒のサンプリングレートのADC(アナログ/デジタル変換器)を使用しています。図1、2に示したシステム図では、8チャンネルデジタイザ「PXI-5105」32枚を18スロットシャーシ3台に挿入した様子を示しています。3台のシャーシに挿入されたデジタイザは全てNI PXIタイミング/同期モジュールとNI-TClkテクノロジ*(ピコ秒レベルでのチャンネルの位相コヒーレンスを実現)によって同期されています。1枚のボードあたり8つの入力チャンネルを備えたNI PXI-5105を採用することにより、256個の高速チャンネルを小型の装置にまとめることができました。

フーリエドメインOCTシステム内で、光デマルチプレクサをスペクトルアナライザとして使用することにより、1秒間に60,000,000本の光軸方向の撮像が可能となりました。左右走査に共鳴スキャナを用いることで、16 kHzのフレームレート、1フレームあたり1400 A走査、深さ3 mmまでの測定、23ミクロンの解像度のOCT画像が実現できました。

*注: TClk同期テクノロジを使用することにより、トリガがかかったときに複数の計測器を同時に応答させるようにし、計測器のサンプルクロックのアライメントを取ったり、複数の計測を同時に開始したりすることができます。TClk同期テクノロジは、SMCテクノロジを採用しているNIのデジタイザ、信号発生器、デジタル波形発生器/アナライザで利用できます。

システム構成の詳細

図4. に、OCTシステムに取り付けた光デマルチプレクサ(OD: Optical De-multiplexer)の様子を示しました。同システムでは、ブロードバンドのスーパールミネッセント・ダイオード(SLD: Super-Luminescent Diode、NTTエレクトロニクス社製のプロトタイプ)を光源としています。SLDから出力される光は半導体光増幅器(SOA: Semiconductor Optical Amplifier、COVEGA社製BOA-1004タイプを使用)で増幅され、カプラ(CP1)を使用してサンプルアームとレファレンスアームに等分されます。SOA1からの光の出力強度は、ANSI安全規格を満たすように、サンプルへの照射量が9 mWになるよう調節されています。サンプルアームの光はコリメータレンズ(L1)と対物レンズ(L2)を使ってサンプル(S)に照射されます。共鳴スキャナ(RS、Electro-Optical Products社製のSC-30タイプを使用)とガルバノミラー(G、Cambridge Technology社製の6210タイプを使用)を使って、サンプルに光を走査させます。サンプルから反射された光を照射光学系で集め、サーキュレータC1を通じてSOA2 (COVEGA社製BOA 1004タイプ)に導きます。カプラCP2を使って、SOA2からの光と参照光路からの光を干渉させます(分割比は50:50)。参照光路はサーキュレータC2とコリメータL3、参照ミラーRMで構成されます。

図4. OD-OCT実験用の仕組み。詳細については本文参照のこと。

 

CP2からの信号は2つある光デマルチプレクサ(OD1とOD2)で周波数毎に分離され差動検出が行われます。2つのODから出された、同じ光周波数を有する信号は、合計256個のバランスフォトレシーバ(New Focus社製2117タイプ)で検出されます。フォトレシーバからの出力信号は、多チャンネルの高速ADCシステム(上述のとおり、32枚のPXI-5105ボードで構成される)で検出されます。データ集録の間、データは大容量のオンボードメモリに保存され、それをコンピュータに送って解析を行います。

干渉スペクトルを同時に検出するという点において、OD-OCTはSD-OCTに似ています。ただし、SD-OCTでは一定時間内のインターフェログラムをCCD 検出器に蓄積するのに対し、OD-OCTでは周波数が異なっていても、全てのインターフェログラムをデータ集録(DAQ)ボードのサンプリングレートで同時に検出することができるという点が異なります。そのため、光軸方向の撮像速度はDAQシステムのデータ集録速度によって決まります。現在のシステムでは60 MHzの速度を実現しています。共鳴スキャナのスピードである16 kHzでフレームレートが決まります。データ集録には一つの走査方向しか使用しなかったため(50% デュティ)、1フレームあたりのサンプリング時間は31.25 μsとなっています。1フレームあたり1875本の光軸方向の撮像が行われましたが、共鳴スキャナを用いた横方向走査は非線形性が強いので1400本の光軸方向の撮像のみ使用されたことから、475本の光軸方向の撮像は無駄になってしまいました。

結果

図5.には、画像の深度に応じて測定されたダイナミックレンジを示しました。ダイナミックレンジは、ポイントスプレッド関数(PSF)のピーク値と、サンプルアームがブロックされていない状態でのノイズフロアとの割合から算出されます。この結果からは、全深度におけるダイナミックレンジは40 dB程度と見られ、深度が増すにつれ、逓減しているのが分かります。OD-OCTのメリットは、AWGの各チャンネルで検出されるスペクトル幅が25 GHzの周波数ステップよりも狭い点にあります。生体組織の測定には、40 dBというダイナミックレンジはかろうじて十分であるといえます。

図6a.は、ODOCTシステムを用いて1秒間に60,000,000本実行された光軸方向の撮像から得られた人間の指の皮膚の画像です。横方向走査の一部を示しました。この画像で表示されているのは1 mm程度の深さで、SS-OCTやSD-OCTを使用した場合に2 mmの深さまで表示できることを考えると浅いのですが、この原因は、感度の低さにあります。3D画像を表示するためには、OCTの断面図が多数必要となります。メモリ容量が少ないため、3D画像を実現するためにサンプリングレートを10 MHzに下げました。10 MHzのサンプリングレートで得られたOCT画像を図6b.に示しました。これら2枚の画像には、品質においてさほどの違いは認められません。

まとめ

北里大学の研究チームは、60 MHzの光軸方向走査速度を実現する、世界最速のOCTシステムの開発に成功しました。本研究は、癌の早期発見と、患者の生活の質(QOL)の向上に役立つことを目的としています。今回のシステム開発にあたっては、画期的なテクノロジを3つ採用しました。1つめは256の狭スペクトル幅の検出を実現したNTT エレクトロニクス社の光デマルチプレクサの技術で、2つめは、New Focus社のバランスフォトレシーバによる信号検出システムです。3つめがナショナルインスツルメンツ社のPXIプラットフォームで、同期機能を備えたこの小型でモジュール性に優れたプラットフォームにより、多チャンネルのデータ集録システムを実現することができました。特に、今回開発したシステムでは、NI PXI-5105(8チャンネルデジタイザ)を32枚使用して、256個のチャンネルから同時にデータを集録したり、NI-TClk同期テクノロジを使用することにより、3つのシャーシに挿入されている全てのデジタイザを数十ピコ秒レベルの精度で同期させることが可能となっています。PXIシステムはモジュール性に優れているため、当初予定していた128チャンネルから256チャンネルに増やすことができただけでなく、必要に応じて、より多くのチャンネルにも対応できるよう自由に拡張することができます。より優れた性能を備えた計測器が登場してきたり、PXI Expressでより速いデータ転送が可能となることで、PXIプラットフォームでできることも各段に増えるため、私たちも新しい要件に対応したり研究をさらに促進することが可能となります。

本件に関するお問い合わせ先

〒228-8555

神奈川県相模原市北里1-15-1

北里大学大学院 医療系研究科 

教授 大林 康二

+81-42-778-8034

obayashi@kitasato-u.ac.jp

謝辞

本研究は、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)先端計測分析機器開発事業によってサポートされています。NTTエレクトロニクス株式会社 姫野明氏(工学博士)、NTTフォトニクス研究所 加藤和利氏(工学博士)には、貴重なご意見を賜りました。この場を借りて深く感謝申し上げます。

参考文献

1 D. Huang, E. A. Swanson, C. P. Lin, J. S. Schuman, W. G. Stinson, W. Chang, M. R. Hee, T. Flotte, K. Gregory, C. A. Puliafito, ans J. G. Fujimoto, Science 254, 1178 (1991).

2 R. Huber, D. C. Adler and J. G. Fujimoto, “Buffered Fourier domain mode locking: unidirectional swept laser sources for optical coherence tomography imaging at 370,000 lines/s,” Opt. Lett. 31, 2975-2977(2006)

3 S. Moon and D. Y. Kim, “Ultra-high-speed optical coherence tomography with a stretched pulse supercontinuum source,” Opt. Express 14,11575-11584 (2006)

4 Y. K. Tao, M. Zhao, and J. A. Izatt “High-speed complex sonjugate resolved retinal spectral domain optical coherence tomography using sinusoidal phase modulation,” Opt. Lett. 32, 2918-2920 (2007).

5 T. Amano, H. Hiro-oka, D. Choi, H. Furukawa, F. Kano, M. Takeda, M. Nakanishi, K. Shimizu and K. Ohbayashi,”Optical frequency-domain reflectometry with a rapid wavelength-scanning superstructure-grating distributed Bragg reflector laser,” Appl. Opt. 44, 808-816 (2005)

6 D. Choi, T. Amano, H. Hiro-oka, H. Furukawa, T. Miyazawa, R. Yoshimura, M. Nakanishi, K. Shimizu and K. Ohbayashi, “Tissue imaging by OFDR-OCT using an SSG-DBR laser,” Proc. SPIE 5690, 101-113 (2005).

7 H. Furukawa, H. Hiro-oka, T. Amano, D. H. Choi, T. Miyazawa, R. Yoshimura. K. Shimizu and K. Ohbayashi, “Reconstruction of three-dimensional structure of an extracted tooth by OFDR-OCT,” Proc. SPIE 6079, 60790T-1–60790T-7 (2006).

8 K. Ohbayashi, T. Amano, H. Hiro-oka, F. Furukawa, D. Choi, P. Jayavel, R. Yoshimura, K. Asaka, N. Fujiwara, H. Ishii, M. Suzuki, M. Nakanishi, and K. Shimizu, “Discretely swept optical-frequency domain imaging toward highresolution, high-speed, hgh-sensitivity and long-depth-range,” SPIE 6429, 64291G-1 - 64291G-7 (2007).

9 K. Ohbayashi, P. Jayavel, T. Amano and K. Asaka, “Enhancement of OFDR-OCT sensitivity using semiconductor optical amplifier,” SPIE 6429, 64291I-1 - 64291I-6 (2007).

10 K. Asaka and K. Ohbayashi, “Dispersion compensation in OFDI-OCT by using dispersion shifted fiber,” SPIE 6429, 64296-1 - 64296-6 (2007)

11 H. Furukawa, T. Amano, D. Choi, H. Hiro-oka, K. Ohbyashi, “High-speed optical-frequency domain imaging by one frame imaging within one single frequency sweep,” SPIE 6429, 6429D-1 - 6429D-5 (2007).

12 D. Choi, H. Hiro-oka, T. Amano, H. Furukawa, N. Fujiwara, H. Ishii and K. Ohbayashi, “A Method of improving Scanning Speed and Resolution of OFDR-OCT Using Multiple SSG-DBR Lasers Simultaneously,” SPIE 6429, 64292E-1 – 64292E-7.

13 K. Okamoto, Fundamentals of Optical Waveguides, Academic Press, Amsterdam, 2006.

Author Information:
Dr. Kohji Ohbayashi
Kitasato University, Center for Fundamental Sciences
Kitasato 1-15-1, Sagamihara
Kanagawa 228-8555
Japan
Tel: +81-42-778-8034
obayashi@kitasato-u.ac.jp

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