統合的行動実験システムの開発効率化
Author(s):
科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 下條潜在脳機能プロジェクト 嗜癖行動研究グループ 下條潜在脳機能プロジェクト 嗜癖行動研究グループ - 高橋 伸彰氏、 廣中 直行氏
Industry:
Life Science
Products:
LabVIEW, Portable DAQ
The Challenge:
1) 頻繁に生ずる実験手続きの変更などに即応できること
2) 複数台の実験箱を独立かつ同時に使用できること
3) 様々な機器をオペラント行動や強化スケジュールと連動して制御すること
The Solution:
基本的に2台から4台の実験箱がインターフェイスに接続されており、このインターフェイスはデスクトップパソコンであればNI PCI-6503、ノートパソコンであればDAQCard-DIO-24を介してLabVIEWプログラムにより制御する。
"LabVIEWは基本を身に付ければプログラミングを本業としない研究者でも比較的容易かつ迅速に開発を進めることができます。"
背景
動物の行動実験は医学、薬学、生理学、心理学などの分野で広く行われており、神経科学の基礎研究や医薬品の開発などに重要な役割を果たしている。そのテーマは学習、認知、情動、社会性など幅広く、主として実験心理学で開発されてきた多種多様な手法が用いられる。行動実験は開始から終了までかなりの期間を要するため、実験を制御し、データを記録するシステムをいかに効率良く、安価で開発できるかが研究の成否を決める重要な要因である。
本研究グループでは、神経生理学や神経薬理学の研究にラットの行動実験を用いている。我々の行動実験には大別して体の動きや姿勢をフォトセンサーや赤外線カメラ等で記録するものと、ラットが自分でスイッチを押して餌や水などの報酬を得るものとがあり、今回は後者を紹介する。なお、すべての実験が厳密な倫理審査を受けていることは言うまでもない。
課題
実験用によく飼いならされたラットを30センチ四方の箱に入れる。この箱には切手ほどの大きさの金属レバーがあり、これをラットはパソコンのマウスをクリックするような要領で押す。すると箱の外にある装置から錠剤型の飼料や水が報酬として与えられる。最初のうち、ラットはレバー押しと報酬の関係に気づいてないが、気づくとレバー押し行動の頻度が上がる。
この実験の基本はこのように単純なものだが、レバー押しと報酬提示の関係を、たとえば5回に1回、3分に1回など、さまざまに変化させたり、箱の中にランプやブザーを取り付けて報酬がもらえる時期を知らせたりするなど、豊富なバリエーションがある。それらを駆使して行動を分析することがこの実験の重要なところである。行動の訓練には時間がかかるために、複数の動物を同時に訓練する必要があり、複数の実験箱で別々の実験を同時に実施する必要もある。さらに、神経生理学の研究を行うには脳波記録装置など外部接続機器へのトリガ制御などが求められる。
今回のシステム構成作業では以下の要求を満たす必要があった。
1. 頻繁に生ずる実験手続きの変更などに即応できること
2. 複数台の実験箱を独立かつ同時に使用できること
3. 様々な機器をオペラント行動や強化スケジュールと連動して制御すること
ソリューション
システム構成
システム構成を図1に示す。基本的に2台から4台の実験箱がインターフェイスに接続されており、このインターフェイスはデスクトップパソコンであればNI PCI-6503、ノートパソコンであればDAQCard-DIO-24を介してLabVIEWプログラムにより制御される。また、脳波記録装置に対するトリガや独自の刺激呈示および反応記録などについてはNI USB-6009を使用している。シリアルポート接続が必要な場合にはNI USB-232を使用している。
実験用プログラムの開発では、手続きの変更に伴うプログラム改編が容易になるように、プログラムの主要な要素をサブVIとしてモジュール化することに努めた。例えば、 n回のレバー押しに1回報酬を与えるという機能をサブVIとして用意すれば、報酬が餌であっても水であっても対応できる。一方、結果の表示や保存などには共通性があるので、どの実験でも共通のサブVIを使用する。また、HEXコマンドを必要とするマイクロシリンジポンプの制御もサブVIとして用意し、脳内への微量薬物の注入なども可能にした(図2)。いくつかのサブVIをモジュール化すれば、実験の多様化への対応は容易である。さらにこうしたVIを実験箱毎にまとめ、それもまたサブVI化した。図3にその一例として実験者(ユーザ)が操作するフロントパネルを示す。タブ制御器によって4つの実験箱をユーザが選択し、実験条件を個別に設定できる。
導入効果
LabVIEWを用いた行動実験制御システムは少しずつ普及しているが、実験心理学にLabVIEWがあまり知られていないこともあって、国内での普及状況はまだ限られている。LabVIEWは基本を身に付ければプログラミングを本業としない研究者でも比較的容易かつ迅速に開発を進めることができる。サブVIによるモジュール化によって、他の実験に影響を与えることなくプログラムのメンテナンスや改編ができる。また、NIの提供するハードウェアをうまく利用すれば、入出力の規格が異なる複数の装置も一元的に制御できる。さらに大きな利点は、脳波などのアナログデータも解析できることや、豊富に用意されているヴァーチャルな制御器を用いれば、人間の行動実験も動物と同じプログラムで制御できることである。LabVIEWの導入で有機的に展開可能な実験システムが構築できる。
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