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コスト削減に貢献したELVISワークステーションによる医学教育機器の製作

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写真2.ELVISワークステーションと心電図計測プロトタイプボード

Author(s):
浜松医科大学付属病院 医療情報部 - 谷 重喜氏

Industry:
Life Science

Products:
IMAQ Vision, NI ELVIS, Multifunction DAQ, LabVIEW, Sound and Vibration Toolkit

The Challenge:
臨床現場である病院で実際に使われている医療装置に即した機能を備えている機器の教育現場への導入。

The Solution:
課題を解決するために以下の方法論を選択した。 1.利用環境に適した新しい教育・研究機器の導入 2.日々進歩する医学レベルに即した発展性 3.実際の診療にも耐え得る十分な性能と完成度

"今回の試作では、約100万円程度に抑えることができ、経費的にも約1/10となりました。作成に要した時間も6ヶ月程度であり、複数の装置を他の言語を用いて製作する場合の1/3程度の時間であったと思われます。"

背景
医療分野における検査や治療に関わる医療装置の発展は、極めて急速である。基礎的な測定原理などは同様であっても、臨床現場で利用される医療機器と医学教育や研究に利用されている機器との機能ギャップが大きくなると情報内容差の戸惑いだけでなく、医療過誤の一因となる可能性も否定できない。しかし、収入の期待できる医療現場の病院環境と同じように医学教育や研究部門で最新鋭の装置を導入するには、予算的制約や保管場所の問題などがあることから、多くの場合、旧式の機器や簡略された実験機器を利用しているのが実状である。

【注意】
今回作成した検査計測機器は、診療レベルの計測機能を有していますが、診療に用いるためでなく、教育・研究機器として試作検討したものであることを最初にお断りしておきます。

課題
最初に、実践的医学教育に即した教育・研究機器導入における考察を行う。課題として挙げられるのは、臨床現場である病院で実際に使われている医療装置に即した機能を備えている機器の、教育現場への導入である。また、計測した数値内容だけでなく、その測定の原理や内容が理解できる機能が望まれる。さらに、従来の各種検査装置は独立した筐体であるため、各装置の大きさだけでなく、複数の装置を利用するために教育実験室での設置方法や、その保管スペースである準備室あるいは倉庫の確保も課題としてあった。

図1.独立した検査機器を統合化して省力

①利用環境に適した新しい教育・研究機器の導入
一般的に医療検査機器である心電図計測、脳波計測、筋電計側、超音波計測などは、各検査項目の計測を行う装置ごとに、独立した筐体に収められていた。このため実習や実験内容に応じて装置の搬入・搬出など、移動を余儀なくされていた。そのため省スペース化を志向した装置が必要であった。

②日々進歩する医学レベルに即した発展性
新しい医療装置や検査装置は、日々、学会や展示会で発表され、臨床現場にも導入されている。しかし、従来は無かった新しい原理や技術に基づく装置は少ないが、計測したデータの数値を提示するだけでなく、その解釈やレポート処理を行うような付加機能は充実したものとなっている。また、物理的な安全対策だけでなく感染対策の視点からも人体に装着される電極やセンサなどの改良が行われている。単に計測値を表示するだけでなく、その臨床学的なインタープリテーション(解説や解釈)レポートを行う機能が装置に望まれる。また、電極やセンサ類も医療分野で現在使われているものを利用したい。

③実際の診療にも耐え得る十分な性能と完成度
診療現場で利用するには、計測器としての安定性と精度の他に、一般的な計測単位による表示だけでなく医療分野で利用する単位系でも表示できる機能が要求される。また、画像や波形を表示する場合には、計測器のように広範囲な測定レンジを提供するのではなく、人体から得られる情報の周波数範囲や電位レベルに特化した適切な表示も必要である。また、通常の検査測定に不要な操作ツマミやスイッチ類も、誤操作防止のために隠れていることが望ましく、必要に応じた表示/非表示の機能が有効と考えられる。

ソリューション
各課題を解決するための方法論の選択を以下に記述する。

①利用環境に適した新しい教育・研究機器の導入
ハード的な表示装置(液晶ディスプレイなど)やコンピュータなどの本体部分と各検査項目(心電計、脳波計など)間で共有が可能な増幅器や制御器などは、ベースユニットとして共通化を行う。各検査項目に特化しなければならない入力/出力部や制御部のみを独立した個別ユニットとして作成し、検査計測に必要な時点で、前記ベースユニットへ接続して利用することとした。これにより主要な本体部分のベースユニットは共通化され、大幅な省力化が実現された。

この時点において、前記のベースユニットとしてNI ELVISワークステーションとDAQを挿入したコンピュータを、個別ユニットとしてはNIELVISプロトタイプ作成ボードを利用した作成を想定していた(写真1)。

写真1.プロトタイプ作成ボード上で作成した心電計、脳波計、呼吸機能計測などの各ボード

②日々進歩する医学レベルに即した発展性
計測されたデータは、単純な数値、波形、画像として表示や記録するだけでなく、医学的診断に有効となる処理を加えて表示することや必要に応じてレポートの作成を行うようにした。また、ナショナルインスツルメンツ社で販売されていない製品や医学的基準に準拠することに関しては、各検査項目に特化した個別ユニット上で、補助的な電気回路ユニット、医療向け配線機材、電極やセンサなどの作成や接続にて対応することにした。

③実際の診療にも耐え得る十分な性能と完成度
診療におけるデータの計測表示に関しては、前項目に記した内容にて解決した。ここでは、操作時における各種のツマミやスイッチ、表示器類の配置状況を、実際の測定操作によって確認し、配置や追加、削除、変更等を繰り返すことで、適切な配置を決めた。この作業過程では、LabVIEWのグラフィカル開発環境が極めて有効であった。

装置の概要
本体のコンピュータには、インテル社のPentium 4(1 GHz)、OSにはMicrosoft社のWindows XPを利用した。このコンピュータのPCIソケットにマルチファンクションDAQ NI 6070Eを装着し、NI ELVISワークステーションと接続し、これらをベースユニットとした(図2.中の左)。

図2.システム構成

①試作したプロトタイプ医療検査装置類
各検査装置は、個別ユニットとしてNI ELVISプロトタイプ作成ボード上に作成した(図2.中の右)(写真1)。配線の保護や絶縁性の確保、外部との不要な接触を防ぐためにアルミ板にて保護を行っている。

i.心電計
健康診断などでも馴染みの検査であるが、循環器系の疾患である不整脈・狭心症・心筋梗塞・心臓肥大などがわかる。心臓から発生する微弱な電気信号を増幅し、波形にして記録する。

ii.脳波計
MRI (Magnetic Resonance Imaging)-CTの登場により器質的脳疾患での利用は減少したが、機能的脳疾患での利用は重要な検査手法である。頭に電極をつけて、脳の神経が発生する微弱な電位変化を頭皮より検出し記録する。

iii.筋電計
筋肉に針電極を刺入し、筋線維の収縮状態を電位変化として測定し記録する。運動ニューロン、末梢神経に原因がある筋力低下や、筋肉そのものに起因する筋力低下などの身体状況を検査する補助的診断法である。

iv.超音波断層装置(エコー)
装置から発生させた超音波を体内へ発射し、各臓器から返ってくる超音波の反射(エコー)を捉えて画像化することにより、その位置、形、あるいは性状などを検査する。超音波検査は人体に無害で、くり返し検査できるが、胃や腸のガスなど音波を強く減衰する環境では見え難くなるため、超音波検査では検査部位や用途に応じて、超音波を送受信する部分である探触子(プローブ)を使い分ける必要がある。超音波の周波数が高ければ分解能の良い鮮明な画像が得られるが、超音波の減衰も大きく探触子から遠い部分の画像は不鮮明となる。

v.肺機能計測
肺機能検査では、肺の空気の出入りの機能を調べる。検査は筒状のマウスピースを口にくわえて、鼻栓をして行う。肺の空気量分画とフローボリューム曲線を作成することにより、肺活量や、息を吐く際の勢いを調べる。この検査対象となる疾患は、気管支喘息、肺気腫、肺線維症などで、手術前の検査としても行われる。

vi.平衡感覚計測
平衡感覚検査では、体を安定した状態で保てるかを測定する。種々の方法があるが、代表的な方法としては、平衡測定盤の上に立ち、体のゆれの方向と強さをセンサーで測定するもので、三半規管、眼球運動、脳の平衡感覚野の状態を診る補助的検査となっている。

採用したNI製品
①ハードウェア
i.NI ELVISワークステーション
アカデミックプログラムで紹介される製品にNI ELVISワークステーションというものがあり、LabVIEWをベースとした設計/プロトタイプ作成の環境として提供されている。このシステムは、汎用計測器や信号発生器としての機能を備えた自由度の高い開発環境であることや、プロトタイプ作成のベンチとしての機能があるために採用した。

ii.NI ELVISプロトタイプ作成ボード
多目的な汎用端子台としてはBNC-2100シリーズ、プロトタイプ作成用のブレッドボードとしてはSC-2075があるが、ELVISへの実装性や作成する計測器の目的毎に取替えを簡便に行うためにELVISプロトタイプ作成ボードを利用した。このボード上には、ELVISやDAQに起因しない外来雑音の除去、医療上の安全性を確保するための絶縁や保護回路、補助的な周波数大域を限定した増幅器や減衰器(フィルター)、電極やセンサへ接続するための配線コネクタを設けた。

iii.NI 6070EマルチファンクションDAQ
データ収集に必要となるマルチファンクションDAQには、NI 6070Eを利用した。人体に生じる電位変化を捉える脳波計測や心電計測では、多チャンネルのアナログ入力とサンプリングレート、そしてキャリブレーション機能や安定精度が必要となる。このため16アナログ入力12ビット分解能、1.25 MS/秒サンプリングレート、そしてキャリブレーション機能を有したNI 6070Eを利用した。

②ソフトウェア
i.LabVIEWプロフェッショナル開発システム
LabVIEWは、中核となる開発環境であり、計測ハードウェアとシームレスに接続や構成を迅速に行う上で欠かすことができない。ハードウェアで構成される従来の医療機器では、各種の操作ツマミやスイッチの設置と表示器の位置や見易さのバランスを初期の設計で確定すると、その変更は困難であった。それに比べてLabVIEWでは、ツマミやスイッチの配置、表示器などの大きさや形状、レイアウトなど、変更が容易であり、利用する際の操作性向上に寄与する。

ii.LabVIEW音響/振動解析ツールおよび信号処理ツール
LabVIEWの開発システムには、計測解析およびデジタル信号処理に利用できるライブラリや関数が内蔵されており、本来ならば複雑なアルゴリズムをプログラミングして作成しなければならない工程も他の機能と同様にグラフィカルな環境で、ノード間のデータの流れを指定することで構築することが可能となっている。さらに得られたデータの解析を行う工程として、音響/振動解析ツールと信号処理ツールを利用した。

iii.IMAQ Vision
医療分野における画像アプリケーションでは、病変部位の抽出(明瞭化)、面積計算、外周計測などが行われることが少なくない。しかし、この種のアプリケーション作成には費用だけでなく時間がかかるのが常であった。各種の画像処理の試行と開発の方向性の検討を行うために、多様なテストを容易に実行できる環境としてIMAQ Visionを利用した。

結果
従来のように各検査装置が分散した筐体であった状態からELVISワークステーションで統合化された検査システムとして構築することができた(写真2)。これにより設置面積は約1/10に減少している。さらにELVISプロトタイプ作成ボードで各検査装置の個別ユニットを作成したことにより、機器の扱いが容易になった。製品と試作品作成コストを直接比較することは難しいが、今回作成した各分析装置を個別に購入した場合には、約1千万円程度の経費がかかる。今回の試作では、約100万円程度に抑えることができ、経費的にも約1/10となった。作成に要した時間も6ヶ月程度であり、複数の装置を他の言語を用いて製作する場合の1/3程度の時間であったと思われる。

LabVIEWの特徴は、単純な経費削減や開発期間の削減だけでなく、機能追加による改善の機会を提供しているという点も評価できる。現在、今回作成した検査計測器は一部だが、さらに高度な装置の作成にも挑戦していく予定である。

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浜松医科大学付属病院 医療情報部
谷 重喜氏

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