原子ダイナミックスによって変化する電気伝導のリアルタイム計測・解析システム

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"この開発により、大幅なコストダウンと飛躍的な作業効率の向上が達成され、解析に要する時間を従来の1/10以下にまで減らすことができるとともに、データの信頼性を高めることができました。"

- 東京工業大学 総合理工学研究科材料物理科学専攻, 久留井 慶彦氏

The Challenge:
本研究では、動画と計測データの同期収録ができる計測システムと、画像データと計測データの同期解析ソフトウェアを開発することを目的とした。

The Solution:
動画と計測データの同期収録、および同期解析するソフトウェアの開発はLabVIEW 7.1とIMAQ VISION 7.0を使用して行った。

Author(s):
東京工業大学 総合理工学研究科材料物理科学専攻 - 久留井 慶彦氏

課題
原子レベルのサイズを有する金属ナノワイヤの電気伝導特性に大きな関心が集まっている。金属ナノワイヤが原子レベルのサイズになると、その物性は、構成原子の配列に敏感になることが指摘されている。しかし、構成原子は、材料内を動き回るという問題もあるため、金属ナノワイヤの原子配列と電気伝導の関係は、あまり明らかになっていない。この関係を解明するには、金属ナノワイヤの原子配列の直接観察と電気伝導の同時計測を行うこと、かつ、リアルタイムで計測することが課題となる。

金属ナノワイヤの構造を調べるため、原子レベルの構造観察が可能な透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる必要がある。この装置に、TVカメラを取り付けることによって、リアルタイムで金属ナノワイヤを観察できるようになる。この観察と連動して電気伝導計測を行うことで目標を達成できる。従来、TVカメラで得られたTEM像の動画は、タイマーの時間をスタンプしてビデオレコーダーに収録し、電気伝導の測定値は、パソコンに収録していた。そのため互いのデータを対応させる作業に大変時間がかかっていた。また、パソコンとスタンプタイマーの時間を合わせる必要があったが、時間が経つにつれ、互いの時間にずれが生じる問題もあったため、同期を取ることが困難であった。

一方、保存された動画は、膨大な情報量であるため、その中から実験目的にあった必要な動画を整理して切り出す作業にも膨大な解析時間を要していた。必要な区間の動画を切り出すだけでなく、それに対応した計測データも探し出して切り出さねばならないためである。また、動画の解析には、画像を鮮明化するための画像処理も必要であった。この画像処理は、1フレームずつ切り出して、静止像としなければ、行うことはできなかった。このような切り出し作業や画像処理は、それぞれ別のソフトウェアを用いて行っていた。

このような状況を踏まえると、金属ナノワイヤの電気伝導特性を明らかにするには、
1. 動画と計測データの同期がとれる

2. 動画と計測データの時間変化を同時に閲覧・編集できる

3. 計測データと連携した動画の切り出し機能や、動画像としての画像処理を行える

以上3点が必要である。本研究では、動画と計測データの同期収録ができる計測システムと、画像データと計測データの同期解析ソフトウェアを開発することを目的とした。

ソリューション
動画と計測データの同期収録、および同期解析するソフトウェアの開発はLabVIEW 7.1とIMAQ VISION 7.0を使用して行った。

ボードには高精度A/D、D/Aコンバーター、および同期機能を持ち合わせているNI PCI-6289を用いた(図1)。

図1

ピエゾ駆動制御を用いて作成した金属ナノワイヤに電圧を印加し、その電流を電圧に変換した値を収録することにより、計算から電気伝導の値を得た。TVカメラから得られた動画は、NI PCI-1409を用いてパソコンに30 fpsでキャプチャーした。電気伝導計測と動画の同期は、NI PCI-6289のカウンタパルスを用いた。

1. 動画と計測データの逐次変化を対応させて表示することにより効率的に解析できるシステムを構築した。

2. IMAQ VISIONでは、動画をフレーム(静止画)の結合として編集できる。
動画を構成する各フレームに連続的に画像処理を行うことで、動画としての画像処理を実現した。

3. 必要な区間の動画を切り取って新たな動画ファイルとして保存できるようにし、同時に対応する計測データも新たなデータファイルとして保存できるようにした。

4. 電気伝導計測は、300 kHzのサンプリングレートで測定し、測定点前後50点の移動平均値を求めて記録している。

その結果、誤差は従来の2%から0.1%に抑えることができた。

結果
同期計測ソフトのフロントパネルを示す(図2)。

図2

左上が電気伝導チャート(上)、印加電圧チャート(下)である。右がリアルタイムTEM像の動画、左下にあるピエゾ駆動制御は、キーボード操作で行える。右下は、金属ナノワイヤへの印加電圧制御である。このパネルによりTEM像と電気伝導の信号をリアルタイムにモニターし、記録ボタンを押した時に、画像データ(avi形式)と計測データ(csv形式)の同期収録が開始されるようになっている。

次に、同期解析ソフトのフロントパネルを示す(図3)。

図3

先ほどの同期計測ソフトで保存した動画と計測データを読み込むと、TEM像の動画フレームが右上に表示され、電気伝導のチャートが下に表示される。チャート内の太い縦線は、現在表示されているフレームに対応した値を示している。このようなチャートによって、現在のフレーム前後の電気伝導変化も把握できるようになった。左上のタブ制御器にあるように、フレームやチャートの進行コントローラ、チャートのレンジ調整、動画の画像処理、フレーム内の長さ測定、計測データのヒストグラム表示などの機能を作成した。特に、画像処理機能(平均化、ローパスフィルター、エッジ強調等)は、各フレームに対して連続的に施すことで、動画像処理として機能するように工夫した。これらの機能は、一つのソフトウェアで処理できるため、解析を効率よく行うのに役に立った。

また、解析に必要な区間の動画と計測データを同時に切り取れる動画・計測データキャプチャー機能を加えることにより、絞り込みを行い、詳細な解析に集中できるようになった。このような同期のとれたデータファイルから同じ時間区間のデータを抽出する機能は、同期、データ処理、画像処理を得意とするLabVIEWならではの機能であると思う。この機能は膨大にあるデータから大事なデータを見逃すことなく抽出するのに大変有効であり、ダイナミックに変化するデータ解析には欠かせないものであることがわかった。上記の解析ソフトを使って得た実験の結果例を示す。

図4

図4は、金属ナノワイヤを構成する原子列が6、4、3、2、1、0本と細くなるのに対応して電気伝導が階段状に減少する様子を示している。ノイズによる電気伝導計測誤差が0.1%になったことに加え、同期が取れたこと、また、動画と電気伝導計測データを同時に閲覧・編集し、必要な区間の動画と計測データを同時に切り取れる動画・計測データキャプチャー機能を利用することにより、このような1秒程度の素早い原子レベルの変化さえも正確に捉えることができた。

まとめ
本研究では、LabVIEWとIMAQ VISIONを用いて原子ダイナミックスによって変化する電気伝導のリアルタイム計測・解析システムを開発した。動画と計測データの逐次変化を対応させて表示することにより効率的に解析することができるようになった。特に、動画としての画像処理の実現や、必要な区間の動画と計測データを同時に切り取れる動画・計測データキャプチャー機能は、市販のソフトではできない新しい機能であり、膨大な情報から漏れることなく全ての必要なデータを抽出できるようになった。また、従来のように市販の複数ソフトを使う必要もなくなった。したがって、この開発により、大幅なコストダウンと飛躍的な作業効率の向上が達成され、解析に要する時間を従来の1/10以下にまで減らすことができるとともに、データの信頼性を高めた。

この開発には、プログラム初心者であった1人の学生が担当したものの、開発から実際に運用するまでに要した期間は、約3ヵ月であり、予想外に早くプログラムを完成することができた。今回開発したプログラムのように、画像と計測データのダイナミックな情報を一括して管理できるシステムは、他の言語では開発困難と思われる。

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東京工業大学 総合理工学研究科材料物理科学専攻
久留井 慶彦氏

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